【納得いかない方必見】交通事故の過失割合とは?流れや事例まとめ!
- 2018/5/8
- 2021/05/28
交通事故に遭われた方の悩みの種になりやすいのが「過失割合」。
- 提示された過失割合に納得できない
- 提示された過失割合は妥当?
など、お悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
過失割合は受け取れる賠償金額を大きく左右するもの。それだけ重要なものですから、交通事故の当事者としては特に慎重に交渉すべき項目の一つです。よって、提示された過失割合に納得いかない、妥当かどうか教えてほしいというお悩みが数多くあります。
この記事では「そもそも過失割合とは何か?」という情報を交えながら、「なぜ納得いかない過失割合が提示されるのか?」「納得いかない場合の対処法」を解説します。
Contents
交通事故の過失割合とは?疑問別に解説!
そもそも過失割合って何?
「過失割合=不注意の度合い」です。事故の当事者双方に、どの程度の不注意があったために交通事故が起きたかを、●:▲という数字で表します。
走行している自動車同士の交通事故では、一部例外を除いて、一方だけが悪い(過失割合0:100)というケースは少なく、ほとんどのケースで当事者双方に過失があります。
怪我の有無で過失割合が決まるものでもなく、例えばAさんは怪我を負い、Bさんは無傷というケースでも「Aさん3:Bさん7」といったように、お互いに過失がある場合が多いといえます。
誰が決める?
交通事故の当事者がお互いに任意保険に加入している場合は、双方の任意保険会社の担当者同士が、過去の判例を基準として話合いによって過失割合を算定します。
そこですり合わせた過失割合が事故の当事者に提示されますので、当事者が合意すれば過失割合が「決定」となります。
算定方法は?
まず、警察が作成する実況見分調書(事故現場の状況を記した書面)や、ドライブレコーダー・監視カメラの映像、当事者や目撃者の証言などから事故状況が精査されます。一般的には、その事故状況と過去の裁判例を照らし合わせて過失割合が算定されます。
ただしその際に加味されるのが、その交通事故特有の事故状況です。事故状況は千差万別ですので、基準として過去の裁判例を取り入れながらも、ケースに応じて過失割合は修正されます。
いつ提示される?
事故日から数日以内に提示されたり、損害額が確定するまで数か月間提示されなかったりと様々です。
過失割合の提示時期がケースによって異なる理由の一つは、当事者の証言が異なるためです。証言が異なれば事故状況が正確に判明するまでに時間がかかりますので、その分過失割合の提示時期が遅れることとなります。
また、事故状況や保険会社の対応などによっても提示時期は前後します。
では、どのような事故の場合にどのような過失割合が提示されるのでしょうか?判例を一部、以下にまとめましたのでチェックしていきましょう。(出典:判例タイムズ38号)
あなたのケースはどれ?交通事故の過失割合における事例集
0対10(A:B=0:10)
- 【事例】
- A車が信号待ちのため停車していたところ、後ろからB車に追突された
対向車線からB車がセンターラインをオーバーしてきてA車に衝突した
A車が交差点を走行中、信号無視をしたB車に衝突された
Aが横断歩道を渡っていた際にB車に接触された
- 【解説】
- 過失割合が0対10というのは、つまり一方に過失が無いとみなされた交通事故のことです。具体的には以上のようなケースで一方に過失が無いと認められます。
【どう対応すべき?】過失割合が10対0になる交通事故の事例4選
1対9(A:B=1:9)
- 【事例】
- A車が優先道路を走行中、左脇にある非優先道路から優先道路に進入してきたB車と接触した。B車が走行してきた非優先道路は、A車が走行していた優先道路からは見通しがきかない。
- 【解説】
- 優先道路を通行している車両は、見通しがきかない交差点を通行する際に徐行する義務は無いものの、注意義務は要求されています。よってこのケースでは、A車の前方不注視が認められ、1割の過失が認めらたものです。
【必見!】交通事故被害者が過失割合9対1で損しない方法とは?
2対8(A:B=2:8)
- 【事例】
- A車が交差点の手前に差し掛かったところで青信号が黄信号に変わった。A車は安全に停止位置に停車できる見込みがあったものの、黄信号を無視して交差点に進入し直進を試みた。そこで、右側から赤信号を無視して交差点に進入してきたB車と衝突した。
- 【解説】
- このケースでは、信号無視をしたという点では両者共通していますが、危険性の大小には大きな差があります。そこで双方の過失を比べてA:B=2:8と定められました。
3対7(A:B=3:7)
- 【事例】
- 交差点にて、A車が走行している道路には車両用信号がなく歩行者用信号があった。一方、B車が走行している道路には車両用信号があった。
- A車は交差点の手前に停止線があったものの、歩行者用信号が青信号だったため停止することなく交差点に進入。B車側の道路は赤信号だったが、減速することなく交差点に進入し、出会い頭に衝突した。
- 【解説】
- A車は停止線で一時停止していないものの、歩行者用信号が青信号だったため、交差する道路からは車両が進入してくることはないと信頼していたケースです。
- この信頼は法的に保護されるべきだと考えられるものの、停止線で停止しなかったことを加味してA車に3割の過失が認められました。
4対6(A:B=4:6)
- 【事例】
- A車が左折して進入しようとする道路は狭く、あらかじめ道路の左端に寄っていては左折できない。そのため左折の合図をして車線の中央から左折しようとしたところ、後続のB車がA車の左側を直進しようとして衝突した。
- 【解説】
- 左折時、左折車はできる限り道路の左側端に寄るように要求されていますが、「進入しようとする道路が狭い」のような理由がある場合は、A車のように車線の中央から左折しても違反ではありません。
- ただし上記のような理由があったとしても、後続車が左側を通過する危険性が高いため、A車としては左後方の安全を確認すべき注意義務があります。
- 上記のケースでは、A車が左折の合図をしているものの、後方安全確認義務違反があったとして過失が決定されました。
5対5(A:B=5:5)
- 【事例】
- 追い越しが可能な交差点での事故事例。A車は交差点に差し掛かったところで方向指示器を点灯させ右折の合図をしたが、道路の中央には寄っていなかった。
- 後続のB車がA車を追い越すためにA車の右側を通過しようとしたところ、右折しようとしたA車と接触した。
- 【解説】
- A車があらかじめ道路の中央に寄っていれば、B車はA車の左側を通過して追い越しができたと考えられる事例です。とはいえB車としても前車の右折を察知することは可能なケースと言えます。
- 道路の中央に寄っていなかったA車、無理な追い越しをしたと考えられるB車の過失は同程度と考えられ、両者50%の過失とされました。
0対9という特殊なケースも
1対9の過失割合が、双方協議のうえ、0対9で合意に至る場合があります。これは「片側賠償(片賠)」と呼ばれるもので、その名の通り、一方の賠償を0にしてもう一方のみが損害を賠償するケースです。0対9だけでなく、0対8といった場合も有り得るでしょう。
どのような場合に過失割合が0対9になるのか?
Aさんが過失0を主張しているものの、相手方保険会社から過失割合1対9(Aさんの過失割合が1)を提示されて、過失割合が合意に至らない場合が一例です。その際に折り合いをつける方法の一つとして、Aさんの過失を0とする場合があります。
過失割合が0対9になればどう変わる?
過失割合「1」の分、事故相手のBさんに損害を賠償しなければならなかったAさんは、賠償額が0になります。
また、相手方のBさんやBさんの保険会社としては、過失割合が合意に至らないために解決までに時間がかかりそうだったところ、妥協策として0対9にすることで解決を早めることができます。
交通事故の形は千差万別ですので、上記に該当しない事故が多数ありますし、事故それぞれで過失割合は修正・決定されていきます。
そんな過失割合について、ぜひ頭に入れておきたいのが「過失割合が決まるまでの流れ」。流れを理解しておけば、過失割合に関する疑問やストレスを少しでも軽減できます。
交通事故を起こしてから過失割合が決まるまでの基本的な流れがこれ!
※事案によって以下の流れは前後します
- 交通事故
- けが人の救護・後続車を誘導するなど安全性の確保
- 警察への連絡(事故の記録を取ってもらう)
- 事故当事者間で、お互いの名前・連絡先の交換
- 病院へ行って治療をする
- 自身の保険会社へ連絡し、事故の状況・怪我の状況等を伝える
- 相手の保険会社から連絡があるので、事故の状況・怪我の状況等を伝える
- 自動車やその他破損した物の修理
- 保険会社の担当者同士が話し合いをし、過失割合をすり合わせる
- 保険会社の担当者から当事者に過失割合が提示される
- 納得できれば合意、不満があれば協議して決定
- 調停・訴訟・第三者機関の介入によって決定することも可能
過失割合の決定に関わる重要ポイント
警察への連絡
事故発生時に警察に連絡をしなかった場合、事故に関する資料(交通事故証明書・実況見分調書など)を作成してもらえません。この事故に関する資料がない場合、事故状況を証明する手段が乏しく、過失割合に関する協議が難航する可能性があります。
なお加害者側が刑罰や免許の停止などを恐れて警察への連絡をせず、事故現場で「治療費や慰謝料を支払うから警察には届け出をしないでほしい」という口約束を持ちかけるケースもあります。
ただこの場合、加害者側が一方的に音信不通になり、受けられるはずの賠償が受けられないというトラブルの原因にもなりかねません。
また、そもそも交通事故が起きた際に、当事者が警察に届け出をしなければならないことは、道路交通法で定められていますので、事故が起きたその場で警察に連絡をするようにしましょう。
自身の保険会社へ連絡し、事故の状況・怪我の状況等を伝える
保険会社に連絡する際は、事故に関する情報を具体的に伝えるようにしましょう。
保険会社からよく質問される項目としては、事故の日時・場所・事故が起きた経緯・車両の登録番号・警察への届け出の有無・事故の当事者双方の名前、連絡先といった情報・負傷者の情報などです。
保険会社はこれらの情報を、事故相手にも連絡のうえ相違がないか確認します。
なお事故日から60日以内に届け出をしましょう。それを過ぎると、賠償金が支払われない可能性があるためです。
保険会社の担当者から当事者に過失割合が提示される
提示された過失割合を、そのまま受け入れる必要はありません。不満があれば、妥当だと考えられる過失割合を主張することができます。
では具体的に、不満な過失割合に対してどのように対処すれば良いのでしょうか?チェックしていきましょう。
交通事故の過失割合に納得いかない!そんな時の対処方法
示談交渉
まずは相手との示談交渉(話合い)によって合意を目指します。その場合、保険会社がどの交通事故事例を元にして過失割合を算定したかを聞き、それを修正するための証拠が必要です。
保険会社が過失割合を算定する際は、一般的に「判例タイムズ」等に掲載されている判例を参考にしています。よって同様に判例タイムズに目を通し、保険会社が参考にした判例が今回の事故と形が似ているのか、修正要素はないのかなどを検討して保険会社に主張します。
※判例タイムズを見て形の似た事例を探すことや修正要素の検討などは、専門知識や経験がなければ難解なものとなります。後述しますが、過失割合に納得いかない場合は、交通事故問題に強い弁護士に依頼をして手続きを行なってもらうことが得策だといえます。
交渉でまとまらない場合はADR、訴訟
過失割合が双方で合意に至らない場合、解決する方法は大きく分けてADR(裁判外紛争解決手続き)と訴訟(裁判)という2種類があります。
ADR
ADRは「Alternative Dispute Resolution」の略で、日本語にすると「裁判外紛争解決手続き」となります。ADRの特徴は…
- 訴訟(裁判)と比べて、費用面で負担が少ない場合が多い
- 手続きが簡便かつ解決までの時間が短い
- 非公開で行なわれるため、ADRを利用していることが外部に漏れる心配はない
- ADRの種類によっては裁判とは異なり解決案を相手に強制できない
- 手続きを利用するためには相手の同意が必要な場合が多い
ADRの代表的な種類をご紹介します。
調停
調停は簡易裁判所で相手方と話合う解決手段です。簡易裁判所といっても、調停を行なう場所は、よくイメージされる「法廷」ではなく裁判所内の「調停室」です。
調停委員が同席して調停案を出すため、当事者と保険会社で交渉をする場合と比べてスムーズに話合いができる可能性があります。
民間機関の利用
交通事故問題の紛争処理に特化した民間機関としては、交通事故紛争処理センターや日弁連交通事故相談センターがあります。これら民間機関は、原則として利用するための費用は不要で、中立的な立場から和解に導いてくれるものです。
訴訟(裁判)
いっぽう訴訟の特徴は以下の通りです。
- 訴訟を提起する際に相手の同意が必要ない
- 判決を拒否することはできない(控訴・上告は可能)
- 判決を相手に強制できる
- 手続き内容・判決などが公開される
- ADRの利用に比べると費用が多くかかる
- 解決までに必要な時間が一般的にはADRよりも長い
誰が対処するのか?
ADR・訴訟ともに、弁護士を立てずに手続きを進めることは可能です。ただやはり、弁護士に依頼することが望ましいといえます。過失割合について争う際は専門知識が必要であるとともに、言い分を通すためにはその根拠が求められます。
資料の収集・精査に時間や労力がかかるほか、交渉をするうえで弁護士がいないために不利になるケースも考えられます。
過失割合に納得いかない場合は、交通事故問題に強い弁護士に相談してみてください。
交通事故の過失割合は何にどう影響するの?
過失割合は単に「不注意の度合い」を表しているだけでなく、交通事故問題解決までの間に様々な影響を及ぼすことをご存知でしょうか。
過失割合に応じて請求できる賠償金額が変わる
例え交通事故の被害者であっても、被害者に過失があって事故が起きた場合、その過失割合に応じて加害者に請求する賠償額が減額されます。これを過失相殺といいます。
では具体的に、過失相殺をすることで、請求できる金額にどのように影響するかを紹介します。
治療費・休業損害・入通院慰謝料などを含めて合計100万円の損害が生まれたケースを例にします。
過失割合 | 損害額 | 計算式 | 請求できる金額 |
---|---|---|---|
0:10 | 100万円 | 100万円×(100%-0%) | 100万円 |
3:7 | 100万円 | 100万円×(100%-30%) | 70万円 |
5:5 | 100万円 | 100万円×(100%-50%) | 50万円 |
※損害額×(100%-自身の過失割合)=請求できる金額
つまり自分の過失分を差し引いて請求しますので、過失割合が大きくなるほど相手に請求できる金額は少なくなります。
賠償金(示談金)の額が大きいほど過失割合の影響も大きい
上記では100万円の損害が生まれたケースで計算しましたが、損害が1億円だった場合は以下のようになります。
過失割合 | 損害額 | 計算式 | 請求できる金額 |
---|---|---|---|
0:10 | 1億円 | 1億円×(100%-0%) | 1億円 |
3:7 | 1億円 | 1億円×(100%-30%) | 7000万円 |
5:5 | 1億円 | 1億円×(100%-50%) | 5000万円 |
このように損害額が大きい場合は、過失割合が「1」上下するだけでも賠償金額に大きく影響します。過失割合が大きくなれば相手に請求できる金額は少なくなるため、過失割合については、保険会社の提示を鵜呑みにせず、妥当かどうかを精査する必要があるといえるでしょう。
自身の過失割合が0の場合、保険会社の示談交渉サービスが使えない!
一般的に、任意保険(自動車保険)には示談交渉サービスがついています。これは、保険会社が事故当事者に代わって相手方との示談交渉を行なうサービスで、一般的には過失割合が「1」以上の場合に示談交渉を行なってくれます。
過失割合が「1」以上の場合、保険会社としては相手方に賠償金を支払う必要があるため、相手方にとって有利な形で交渉が進んでしまうと賠償金の支払い額が増える可能性があります。
よって過失が「1」以上の場合は、一方的に交渉を進められないようにするためにも、自身の保険会社が介入して示談交渉を行なうというわけです。
そんな示談交渉サービスが使えないのが、自身の過失割合が「0」の場合。
その理由としては、自身の保険会社としては賠償金を支払う必要がないため、そもそも交通事故問題に介入する必要がないからです。
自身の過失割合が「0」だとしても、相手方との交渉を自分自身で行なうことは非常に気疲れするものです。弁護士に依頼することで示談交渉を代行してもらえますので、精神的・時間的な負担を減らすためにも、弁護士に依頼することをおすすめしています。
過失割合が大きいと、保険会社に治療費を支払ってもらえない!?
交通事故に遭った際、治療費は多くのケースで相手方の任意保険会社が病院に直接支払います。よって被害者が通院する度に財布から治療費を支払う必要はありません。
ただし、過失割合が大きいために「任意保険会社から治療費を支払ってもらえない」というケースもあります。その理由は、任意保険会社が治療費を余分に支払う可能性があるためです。
例として、AさんとBさんの交通事故で、過失割合はA:B=7:3だったとします。Aさんの治療費が総額30万円だった場合、過失相殺をしてBさんの任意保険会社から支払われる治療費は9万円となります。
よってBさんの任意保険会社としては、仮に初めからAさんの治療費を支払っていると、9万円を超過して支払うことになります。このような理由から、過失割合が大きい場合は相手の任意保険会社が治療費を支払ってくれない可能性があります。
まとめ
過失割合は交通事故問題で、悩みの種になりやすいものです。過失割合に関する問題に直面した際は、被害者がご自身で解決に導くことは困難ですから、交通事故問題に強い弁護士に相談することが得策です。
過失割合に少しでも疑問がある、または悩みがあるという方は、ぜひ交通事故問題に強い弁護士を探してみてください。