【後遺障害9級】認定時に重要な6つの書類と各慰謝料基準の相場は!?
- 2019/3/28
- 2019/09/05
後遺障害9級は、後遺障害の等級の中でも障害の範囲が広いものです。
後遺障害9級が認められる事例は以下の通りです。
- 片方の目の視力が0.06以下になった
- 両耳の聴力が1m以上の距離の普通の話し声が理解できなくなった
- 薬を内服し、数カ月に1回程度てんかんの発作が起きる
障害の部位や症状などによって1~17号に分けられています。高次脳機能障害や上記の症状例など、所見の判断が難しい障害も後遺障害9級に含まれています。
そのため、障害を見逃されてしまい、後遺障害認定が下りないリスクがあるため注意が必要です。
後遺障害の等級は、損害賠償請求の金額に大きく影響します。そのため、正しい等級に認定されることが重要となりますが、具体的な症状、申請方法を知らないと、本来あるべき等級より低い等級に認定される恐れもあります。
Contents
後遺障害9級に当てはまる症状と賠償金額事例
後遺障害等級とは
後遺障害9級は、後遺障害の等級で9番目に重いものを指します。後遺障害9級における症状の範囲は広く、手足や臓器、視力や聴力といった機能、神経系、外貌、生殖器などの障害が当てはまります。
1級 | 2級 | 3級 | 4級 | 5級 | 6級 | 7級 |
8級 | 9級 | 10級 | 11級 | 12級 | 13級 | 14級 |
※該当等級をクリックすると各ページへ移動します。
以下9級の各部位ごとの症状事例です。
後遺障害9級の部位ごとの障害状況
部位 | 後遺障害 |
眼の障害 | 1号. 両眼の視力が0.6以下になったもの 2号. 1眼の視力が0.06以下になったもの 3号. 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの 4号. 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
耳の障害 | 7号. 両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの 8号. 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの 9号. 1耳の聴力を全く失ったもの |
鼻の障害 | 5号. 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの |
口の障害 | 6号. 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの |
醜状障害 | 16号.外貌に相当程度の醜状を残すもの |
神経系統の機能又は精神の障害 | 10号. 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
内蔵及び生殖器の障害 | 11号. 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 17号. 生殖器に著しい障害を残すもの |
手指の障害 | 12号. 1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの 13号. 1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの |
足指の障害 | 14号. 1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの 15号. 1足の足指の全部の用を廃したもの |
【詳しく解説】
1号 | 両目の矯正視力が0.6以下になったものが当てはまります |
2号 | 片目の矯正視力が0.06以下になったものが当てはまります |
3号 | 視神経の障害によって、物の見え方や視野に障害が出たものが当てはまります。半盲症、視野狭窄、視野変状などがあります |
4号 | 両目のまぶたの欠損が当てはまります。目を閉じたときにまぶたが目を覆えないような状態です |
5号 | 鼻の欠損と機能の障害が当てはまります。4号と合わせてこれらの欠損は顔の美醜にも関係あるため、7級に当てはまることもあります |
6号 | 咀嚼と言語の機能障害が当てはまります。物を噛む、会話をするなど、口に関係する障害です |
7号 | 聴力の機能の障害で、両耳が1メートル以上の距離で普通に話し声が聞き取れない状態です |
8号 | 同じく聴力の障害で、片耳が触れるくらい近くからの大声が聞き取れず、なおかつもう一方も1メートルの距離で話し声が聞き取りにくい状態です |
9号 | 同じく聴力の障害で、片方の耳が完全に聞こえない状態です |
10号 | 脳神経や精神に障害が残り、仕事内容に相当の制限がある状態です。ここに高次脳機能障害が入ります |
11号 | 胸部や腹部の内臓の障害で、仕事内容に相当の制限がある状態です |
12号 | 片手の親指、または親指以外の2本の指を失った状態です |
13号 | 片手の親指を含んだ2本の指の機能を失った状態です |
14号 | 片足の第一の指を含み2本の指を失った状態です |
15号 | 片足の指の機能を失った状態です |
16号 | 外貌(見た目)を相当程度損なった状態が当てはまります |
17号 | 生殖器の著しい障害が当てはまります |
後遺障害9級の慰謝料相場・逸失利益と3つの慰謝料基準
後遺障害9級の慰謝料相場には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3種類があります。この3つの基準はそれぞれ相場が異なっており、方法を間違えると低い基準が適用される恐れがあります。
弁護士基準
弁護士基準は慰謝料相場がもっとも高い基準です。慰謝料相場は任意保険基準で提示される金額を超え、690万円です。
自賠責基準
自賠責基準では、慰謝料相場がもっとも低い基準です。自賠責基準の後遺障害9級の慰謝料金額は245万円となっています。
任意保険基準
任意保険基準の慰謝料相場は、自賠責基準と比較すると高めであると言われています。ただし、それぞれの保険会社によって異なる方法で算出されるため、相場は明確ではありません。
後遺障害9級の判例
名古屋地方裁判所判決、平成19年(ワ)第6411号事件
概要:信号のない交差点で普通乗用車と自動二輪者が出合い頭で衝突
慰謝料:1,020万円(逸失利益2230万4257円認められました)
東京地方裁判所判決、平成24年(ワ)16459号事件
概要:タクシーを車道の端に停車。後部トランクを開けて荷物を取り出していたところ後方から被害者に対し衝突
慰謝料:1,038万円(逸失利益1373万3842円認められました)
後遺障害9級の認定してもらうための重要な6つの書類
後遺障害申請の方法は事前認定と被害者請求の2つ存在します。ただし、それ以前に医師によって作成された後遺障害診断書が必要となります。以下それぞれの申請方法の違いです。
事前認定とは
加害者側が契約している任意保険会社に対し後遺障害診断書を送付することで、申請に必要な書類対応などを全て行ってくれます。ただし、書類不備によって稀に認定が下りないケースなどが発生するため注意が必要です。
被害者請求とは
加害者側の自賠責保険会社に対し、被害者自身が後遺障害申請を行います。
申請に必要な書類集めなどは被害者自身が行うため、時間がかかるデメリットがある一方、事前認定の説明にて記載した書類不備などが起こる心配はありません。
書類名 | 受取及び申請場所 | 手数料 |
自賠責保険支払請求書兼支払指図書 | 任意保険会社から送付 | – |
交通事故証明書 | ・事故現場を管轄する各都道府県又は最寄りの自動車安全運転センター窓口 ・郵便振替による交付申請 ・インターネットからの申込 ※申請用紙は警察署、交番、自動車安全運転センターにて受取可能 |
1通540円 ・郵便振替の場合+70円 ・コンビニの場合+130円 |
診療報酬明細書及び診断書 | ・任意保険会社が管理している場合、コピーにて送付してもらう ※国民健康保険を使用している場合、指定の診断書を使用・作成するよう病院へ依頼 |
– |
後遺障害診断書 | 病院側にて作成してもらう | – |
レントゲン、MRI画像 | – | – |
後遺障害の申請可能期間と申請までの期間
事故後、通院し症状固定と判断されるまで約6ヶ月程度かかります。その間の期間に後遺障害申請を行った場合、認められるケースは殆どありません。原則として症状固定と判断された後、申請を行います。
また、後遺障害の申請は保険金支払請求の一環として行います。そのため、支払請求の時効内に行わなければ無効となるため、注意が必要です。以下保険金請求の時効です。
被害者請求の場合 | 加害者請求の場合 | |
傷病の場合 | 事故日から3年以内 | 加害者が被害者・病院などに賠償金を支払ったときから3年以内 |
後遺障害を負った場合 | 症状固定日から3年以内 | |
死亡の場合 | 死亡日から3年以内 |
認定が下りなかった理由として、書類不備のケースもあれば認定するだけの症状でない等様々です。しかし、認定申請は一度しかできないという決まりはありません。
認定結果に不服がある場合、異議申し立てを行い、再度審査を行うことができます。回数や期間の制限はありませんが、異議申し立てを行った際2ヶ月~6ヶ月ほど期間を要します。
認定してもらうために医師とのコミュニケーションが大切な理由
後遺障害9級に認定してもらうためには、正確な症状申告と適切な検査が必要です。9級には高次脳機能障害や精神的な障害も含まれており、器質的には障害が発見できないのに症状だけが発現することもあります。
そのため、診断には非常に慎重さが求められ、交通事故の診断書や後遺症診断書に関する知識や経験のない医師では、十分に対応できないことも考えられます。後遺障害の認定のためには、医師の診断書や後遺症診断書、レントゲンの画像などが必要です。
ところが、画像などに障害が反映しない場合には、低い等級で認定されたり、後遺障害の認定自体がされなかったりするケースがあります。
診断書には医師の診断である所見とともに、自覚症状についても書かれます。自覚症状も重要な認定の材料ですが、医師とのコミュニケーションが十分でないと上手く伝わらず、診断書に反映し切れないこともあるため、医師とは十分にコミュニケーションをとり、症状は漏れなく伝えることが大切です。
後遺障害9級の慰謝料は弁護士に依頼すれば増額できる!?
後遺障害9級の慰謝料を請求するなら、弁護士基準がもっとも有利です。そのため、慰謝料を請求するなら弁護士に依頼する方が良いでしょう。
弁護士に依頼すると弁護士費用はかかりますが、着手金ゼロの成功報酬システムを採用している事務所であれば、初期費用はかかりません。大きく増額できる見込みもあるため、費用をかけてでも依頼する価値があります。
その他、損害賠償には後遺障害慰謝料の他、入院慰謝料や逸失利益などがありますが、これらの増額も弁護士に依頼することができます。
弁護士に面倒で難しい手続きを代行してもらうことで、自分や家族は、交通事故の心身の傷を癒すための時間を十分にとれるでしょう。