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示談金に納得できない!交通事故の民事裁判の費用と慰謝料獲得までの流れ

  • 2019/4/1
  • 2021/05/26

交通事故の当事者になった場合、加害者・被害者双方の過失割合に基づいて損害賠償を行うことになります。その賠償額については、双方の保険会社が示談交渉を行いますが、交渉が決裂することもあります。

このような場合、民事調停か民事裁判によって公平な判断を仰ぐことが可能です。

交通事故における民事裁判とはどのようなものでしょうか。

交通事故における民事裁判のメリット・デメリットと判例

民事裁判を起こすメリット

民事裁判とは、民事事件について原告が訴訟を起こした場合に、原告の主張が妥当であるか、被告にどのような責任があるかなどを法のもとに審議するものです。

民事裁判においては原告も被告も民間人であり、裁判によって刑事罰が与えられることはありません。

民事裁判を起こすデメリット

交通事故においては、主に過失割合や損害賠償額を争うものとなり、示談交渉や民事調停が決裂した場合や、被害者が重傷を負って高額な賠償額が必要になる場合などに有効な手段です。
以下が民事裁判におけるメリット・デメリットです。

メリット デメリット
・裁判利用によって終局的に解決できる
・相手との合意が無かった場合でも解決ができる
・強制執行が可能となる
・裁判手続きの手間がかかる
・費用が高く敗訴リスクがある
※費用については案件ごとに異なります
・期間が長期化する場合がある

交通事故における民事裁判の判例

横浜地裁 平成29年7月18日判決

判決:後遺障害1級1号の四肢麻痺等を残す50歳男性の人身損害額4億3328万円と認定
概要:男性の年収2,400万を認定・同額を基礎として休業損害と後遺症逸失利益を算定したため高額になっています。

大阪地裁 平成25年11月21日判決

判決:入院10日、通院期間261日(実通院日数157日)の傷害慰謝料120万円と認定
概要:腰椎捻挫や背部打撲などによって入院10日、通院期間261日(実通院日数157日)を余儀なくされましたが、被告が事故後逃走した事やその後原告への謝罪も考慮し120万円と認定されました。

※裁判に勝訴した場合、後遺障害によっては億単位で請求することも出来ますし、後遺症が残らない事案であったとしても100万円以上請求できるケースはあるため、被害者が泣き寝入りする必要はありません。

では、民事裁判を行う際の準備や流れを見ていきましょう。

民事裁判に必要な準備と裁判時の流れ

民事裁判に必要な準備

民事裁判を行う場合、裁判所へ以下の書類を提出しなければなりません。

訴状:被告の数+1通

裁判所に提出する訴状の数は被告の数に1を加えた数です。(1通は正本、他は副本となります。)それそれに押印・訂正印が必要です。
※訴状は、損害賠償額や事故の内容などを記載するため、漏れが無いよう綿密に弁護士と打合せされることを推奨します。

証拠書類の写し:被告の数+1通

訴状と同数コピーし、提出します。証拠調の際、原本提示を求められる場合があります。
※交通事故事案によって証拠書類が異なるため、弁護士に確認してください。

収入印紙、郵便切手

請求額が大きくなれば多額の収入印紙が必要となります。
※URL:http://www.courts.go.jp/vcms_lf/315004.pdf

[訴状の提出先]
被害者の住所又は被告となる人の住所又は交通事故の発生場所を管轄する裁判所へ提出します。また、請求金額が140万以下の場合は簡易裁判所、140万以上の場合は地方裁判所となります。

ここからは、示談交渉および民事調停が決裂した後の民事裁判の流れを追っていきます。

裁判時の流れ

裁判所に訴状を提出

原告が裁判所に提訴するときは、交通事故の概要や損害賠償の金額といった原告の主張と、原告・被告双方の住所・氏名などを記載した訴状が必要です。そしてこの訴状は、提訴する裁判所と原告・被告にそれぞれ用意します。

ちなみに、訴状に記載する損害賠償の金額は、ケガの治療など損害にかかる諸費用に過失割合による相殺分を加味します。さらに勝訴した側は敗訴した側に、裁判にかかる費用を請求することが可能です。

口頭弁論を行う

口頭弁論とは、原告および被告が、それぞれの要求や言い分を答弁書に起こして行う弁論です。訴状を提出すると1~2ヶ月後に裁判所から口頭弁論期日を指定され、裁判所へ行きます。

第一回口頭弁論期日は、訴訟に対する回答書面である答弁書を提出すれば出席する必要はありませんが、原告・被告のいずれかが欠席および答弁書もないときは、この時点で相手側の要求が認められたことになります。

争点整理・証拠の提出

第一回口頭弁論後は1か月に1回のペースにて裁判が開かれ、お互いの言い分を主張し、何が争いになっているかを整理します。

また、原告および被告は、交通事故が起こった時点での詳細な状況証拠、また原告が負ったケガなどの損害について、診断書や入通院の日数、仕事を休業した日数がわかる書類などを提出します。これらの証拠を踏まえて現場検証などが行われ、原告・被告の言い分が正当であるかどうかが判断されます。

和解勧告

民事裁判を進めているときに、裁判所から和解を提案されるケースも存在します。和解は、原告・被告双方の言い分を踏まえた上で、過失割合や賠償額について譲歩を持ち掛け、納得する形に持って行くものです。訴訟上の和解が成立すれば裁判所が和解調書を作成→裁判が終了となります。和解が成立しない場合は、「尋問」へと移ります。

そのため、当初の要求どおりにならないこともありますが、手早く問題を解決できることから、この方法を取るパターンも少なくありません。

尋問

和解が成立しない場合、判決を出す前に尋問が行われます。
法廷の場にて、当事者や裁判官からの質問、過失割合や因果関係が争点となる場合は事故の目撃者や医師などが証人尋問を行う場合があります。
※尋問終了後、判決前に和解をしたいと考えなおし和解に応じる事も可能です。

判決が下る

弁論が集結し、1~2ヶ月後に判決期日を裁判所から告げられます。判決期日は当事者が出廷しなくても問題はありません。

※この判決に不服がある場合には控訴することが可能ですが、判決送達日から2週間以内に控訴状を提出する必要があります。2週間以内に控訴状を提出しない場合は、判決が確定となり裁判は終了となります。

判決確定後、加害者が任意保険会社に加入している場合は、定められた賠償額が支払われ解決となります。

控訴・上告

公訴提起後、50日以内に控訴理由書という書面を裁判所へ提出するよう求められます。その後は、一審同様に互いの主張を繰り返し、和解協議(出来なければ判決)という流れになります。

交通事故民事裁判の審理期間と各手続段階の平均期間

交通事故の訴訟を提起しようと思っても判決までの期間が分からない為、不安を感じる人は少なくありません。以下平均審理期間についての統計データが以下の通りです。

交通事故の民事裁判の第一審理期間

6か月以内 20.60%
6か月~1年以内 41.10%
1年~2年以内 32.10%
2年~3年以内 5.30%
3年~5年以内 0.90%
5年を超える場合 0.07%

※「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」(最高裁判所・平成29年7月21日)統計データ参照

交通事故裁判の民事裁判の第一審の各手続の平均期間

訴え提起~第1回口頭弁論 2.4か月
第1回口頭弁論~人証調べ開始 11.8か月
人証調べ開始~終了 0.2か月
人証調べ終了~弁論終結 1.7か月
弁論終結~判決 1.8か月

※「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」(最高裁判所・平成29年7月21日)統計データ参照

平均すると判決まで1年半の期間を要する事となり、半年以内に判決が出る可能性は低いケースが大半だという事が分かります。

民事裁判にかかる費用

民事裁判には、大きく分けて下記の2つの段階で費用が発生します。

提訴の際にかかる費用

裁判所手数料

先に説明したとおり、要求する損害賠償の金額に合わせて、訴状に収入印紙を添付し納める費用です。一例をあげると、要求する賠償額が100万円のときの裁判所手数料は10,000円、賠償額が1,000万円の場合は50,000円などとなります。

予納郵券

裁判所から原告および被告に書類を郵送するための費用です。これもあらかじめ裁判所に納める必要があります。予納郵券の金額は裁判所によって異なり、たとえば大阪地方裁判所では基本5,000円、送付する人数が1名増加するごとに2,200円が上乗せされます。

弁護士費用

裁判を弁護士に依頼する場合、弁護士費用が必要になります。提訴の段階では着手金を弁護士に納めることになりますが、その金額設定は弁護士によって異なるため、確認が必要です。

裁判に掛かる弁護士費用の内訳としては以下の通りです。

  • 着手金:弁護士に依頼した段階で発生する費用
  • 報酬金:裁判で最終的に認められた金額に応じて支払う成功報酬
  • 実費:郵送などの必要経費
  • 日当:事故現場・裁判所へ弁護士が出向く場合の時間拘束に対する費用
日弁連の場合

日弁連が弁護士費用を規定していた時代のものを使用している弁護士事務所は多々あります。それを元に計算した結果を表にまとめました

経済的利益 総額(①+②) ①着手金 ②報酬金
100 28 11 17
200 52 17 35
300 78 26 52
400 94 31 63

※金額はあくまで概算です。(単位:万円)

独自の料金体系

現在、着手金無料+報酬金20万+成功報酬10%(賠償額から10%)を獲得する弁護士事務所も増えています。この場合、費用倒れすることが無く依頼者目線でも分かりやすいことから大手法律事務所ではこの料金体系が多いようです。
※裁判時には別途費用が発生するケースもあるため、事前に確認する必要があります。

賠償額 総額 着手金 報酬金
100 40 無料 40
200 60 無料 60
300 80 無料 80
400 100 無料 100

※金額はあくまで概算です。(単位:万円)
裁判において、賠償金認容額の1~2割程度を相手方に負担させる判決を獲得できる場合があります。全額費用を認められるわけではありませんが、負担を認めてもらう事が出来れば費用負担は軽減されます。

訴訟手続き中にかかる費用

証人に支払う費用

交通事故の目撃者がいた場合、裁判で証人として証言してもらうことが可能です。このとき、証人の交通費や日当などを当事者が負担する必要があります。日当については裁判所によって金額が異なり、大阪地方裁判所では8,000円以下となっています。

書類にかかる費用

裁判所内で作成される証言調書は、その裁判でのやりとりをすべて記録しているため、裁判を有利に進める上で重要です。証言調書は外部に持ち出しができないため、裁判所内でコピーを取る必要があります。このとき、コピー代は1枚につき数十円程度となり、枚数がかさめばその分の費用が増えるでしょう。

鑑定費用

交通事故において鑑定が必要になったとき、専門業者に依頼することになります。この際の鑑定費用についても、当事者が負担しなければなりません。その費用は、鑑定業者によってさまざまです。

訴訟手続き中にかかる費用

民事裁判は、交通事故における過失割合や損害賠償の金額を決定するのに有効な手段です。提訴自体は当事者でも可能ですが、その手続きは複雑で難しい面もあるでしょう。

※訴状作成や裁判時の流れにおける主張についても素人では中々難しい事案は少なくありません。また、このような手続きや証拠収集などは、弁護士に依頼すると手間がかなり軽減されるはずです。民事裁判を起こすなら、まずは弁護士に相談するのがベストです。