交通事故における弁護士費用特約の5つのメリット
- 2019/4/22
- 2021/06/18
交通事故で弁護士に相談や依頼をすると、弁護士費用がかかってしまうので躊躇する方がおられます。そのようなとき「弁護士費用特約」を利用できれば、自分の負担を減らすことが可能です。
今回は「弁護士費用特約」とはどのようなものでどうやって使うのか、利用の際の注意点などをご説明していきます。
Contents
弁護士費用特約とはの重要性とその意味
弁護士費用特約とは、自動車保険(任意保険)についている保険特約の1つで、交通事故に遭ったときの弁護士費用を保険会社が負担してくれるものです。弁護士費用特約をつけておけば、交通事故で弁護士に相談するときの費用や示談交渉を依頼するときの着手金、報酬金などをすべて、保険会社に払ってもらうことができます。
弁護士費用特約があれば、被害者本人は費用の負担をする必要がありません。
ただし弁護士費用特約には「限度額」があり、それを超える部分は被害者本人の負担となります。
<限度額>
法律相談料は1事故1名について10万円まで、示談交渉や訴訟の着手金・報酬金・実費などの費用については1事故1名について300万円が限度です。重い後遺障害が残った大事故や死亡事故のケースなどでは、被害者に負担が発生する可能性があります
弁護士費用特約の5つのメリットと使い方
まずは弁護士費用特約のメリットと使い方について詳しく解説します。
弁護士費用特約のメリット
無料または安い費用で弁護士に対応してもらえる
弁護士に交通事故の対応を依頼すると、通常は数十万円以上の弁護士費用がかかります。一方弁護士費用特約を利用できれば、300万円以内の範囲であれば被害者本人に負担が発生しません。仮に300万円を超えるケースであっても300万円まで保険会社が負担してくれるので、被害者の負担は非常に軽くなります。
弁護士基準が適用されて賠償金が増額される
被害者が自分で示談交渉を進めるよりも、弁護士に依頼すると賠償金が増額されます。慰謝料や休業損害などの賠償金が「弁護士基準」で計算されるからです。また弁護士が介入することで過失割合が適性になり、賠償金が増額されるパターンもあります。後遺障害認定のサポートを受ければ、自分で対応するよりも高い等級の後遺障害認定を受けやすくなるでしょう。
小さな事故、物損事故でも費用倒れの心配がない
軽い打ち身やすり傷程度の怪我の人身事故や物損事故では、通常弁護士に依頼すると「費用倒れ」になります。つまり弁護士に依頼して得られる利益より弁護士費用の方が高額になってしまい、まったく利益がなくなります。
弁護士費用特約を利用できれば、弁護士費用は全額保険会社が支払ってくれるので被害者に負担が発生しません。相手から払われた賠償金を全額手にすることができるので、費用倒れの心配が不要になります。
もらい事故でも安心
交通事故の中でも加害者に100%の責任が認められる「もらい事故」では、被害者の保険会社が示談交渉の代理をしてくれません。被害者が加害者に支払いをしないので対人対物賠償責任保険が適用されず、保険会社が示談を「代理」する根拠がないためです。被害者は1人で示談交渉を進めるしかなくなります。
このようなケースでも、弁護士費用特約をつけておけば無料で弁護士に相談できたり示談交渉に対応してもらえたりするのでメリットが大きくなります。
ストレスも軽くなる
交通事故の被害者が自分で示談交渉に対応すると、非常に大きなストレスがかかります。弁護士に任せてしまえば、相手とのやり取りや反論の検討などを弁護士がしてくれるので、気持ちも楽になり毎日の生活を平穏に過ごしやすくなります。
弁護士費用特約の使い方
弁護士費用特約を使う手順をお知らせします。
① 保険会社に弁護士費用特約を使いたいと伝える
まずは契約している保険会社に対し、弁護士費用特約を使いたいと申し出ましょう。特約が適用されるケースであれば、担当者が了承します。
② 弁護士を探して相談する
保険会社の了承を得られたら、次に弁護士を探しましょう。このとき、なるべく交通事故に強い弁護士を見つけることが重要です。依頼したい弁護士が見つかったら法律相談の予約をとりましょう。
③ 弁護士費用特約が使えるか確認する
弁護士に相談をしたときに、その弁護士事務所で弁護士費用特約を利用できるか確認します。保険会社によって取り扱いが異なるケースもあるので、自分の加入している保険会社と担当者名を伝えると良いでしょう。
④ 弁護士に依頼する
相談を受けた弁護士が弁護士費用特約に対応している場合には、示談交渉等の依頼をします。このときには特にお金を払う必要がありません。委任契約書と委任状を提出して面談を終了します。
⑤ 弁護士が保険会社とやり取りする
その後弁護士が保険会社の担当者とやり取りをして、弁護士費用の支払いが行われます。
弁護士費用特約を使えないケースと対処方法
弁護士費用特約が適用されないケース
中には弁護士費用特約を利用できない場合もあるので、注意が必要です。
- 自転車同士や自転車と歩行者の事故
- 日常生活に関わる事故
- 被保険者の故意や重過失による事故
- 無免許運転、飲酒、麻薬などによって正常な運転ができないおそれがあるのに運転して起こした事故
- 闘争行為や自殺行為、犯罪行為による事故
- 家族や車の所有者に対する賠償請求
- 台風や洪水、高潮によって発生した損害
- 被保険者の所有物や管理するものに問題があって発生した事故
- 異常かつ危険な方法で乗っていた場合
- 事業用車両の事故
※保険会社によっても適用条件に違いがあるので、事故に遭ったら保険会社に確認してみましょう。
弁護士費用特約が適用されないときの対処方法
弁護士費用特約が適用されない場合には、基本的に自分で費用を払うしかありません。手元にお金がなかったら相談料無料、着手金無料の弁護士を探してみましょう。こういった弁護士であれば、当初の費用無しに示談交渉などに対応してくれます。
また法テラスを利用する方法もあります。法テラスの民事法律扶助を適用すると、法テラスが必要な弁護士費用を立て替えてくれて、利用者は1か月1万円ずつ程度返済していけば良いので負担が軽くなります。
着手金&成功報酬も加味した弁護士費用の目安は
実際に弁護士費用特約を適用すると、どのくらい弁護士費用が安くなるのでしょうか?
- 物損事故のケース
- Aさんは物損事故に遭って加害者と示談を進めましたが、意見が合わずトラブルになってしまいました。弁護士費用特約を利用して弁護士に示談交渉を依頼すると、相手から10万円を支払ってもらう内容で合意できました。かかった弁護士費用は総額12万円でしたが、これについては保険会社が全額負担してくれるのでAさんに負担は生じません。Aさんは10万円をまるまる受け取ることができました。
- むちうちのケース
- Bさんは交通事故でむちうちになって半年間通院しました。自分で示談交渉をすると、相手からは50万円しか賠償金をもらえないということだったので、納得できずに弁護士に相談しました。弁護士が示談に対応したことで最終的に獲得した賠償金は100万円です。弁護士費用は20万円でしたが、特約の範囲内だったのでBさんに負担は発生しませんでした。弁護士費用特約に入っていなかったら手取り額は50万円になってしまうところでしたが、100万円をそのまま受け取ることができました。
- 後遺障害認定ケース
- Cさんは交通事故で重症の後遺障害が残り、7級に認定されました。自分で示談交渉をすると、賠償金を2500万円しか払わないと言われたので、納得できず弁護士に依頼したところ、賠償金が5000万円にまで増額されました。弁護士費用は400万円でしたが、300万円を保険会社に払ってもらったので、Cさんが負担したのは100万円です。最終的にCさんの手元には4900万円が入ってきました。もし特約に入っていなければ手取りが2500万円になるところでした。
交通事故では、小さな事故から大きな事故までどのようなケースであっても、弁護士費用特約の利用が有効です。次に自動車保険を契約するときには、必ずつけておきましょう。また交通事故に遭ったときに弁護士費用特約を利用できる状況であれば、遠慮せずに保険会社に申告して有効活用しましょう。