交通事故紛争処理センターを有効活用するための3つの知恵袋
- 2019/4/22
- 2021/07/02
交通事故で加害者の保険会社ともめてしまったときには、「交通事故紛争処理センター」を利用すると解決できる可能性があります。
交通事故紛争処理センターではどのようなサービスを受けられるのか、またメリットやデメリットなども含め、有効活用するための知識をご紹介していきます。
Contents
交通事故紛争処理センターとは?
交通事故紛争処理センターとは、交通事故トラブルを解決する手助けをしてくれるADRです。ADRとは、裁判所を使わない紛争解決機関の事です。交通事故紛争処理センターは、交通事故専門のADRの中でも利用者数が非常に多く代表的な機関として知られています。略して「紛セン」と呼ばれる事もよくあります。
<交通事故紛争処理センター>
交通事故紛争処理センターは、全国の主要都市(高等裁判所の所在地)に支部が置かれており、利用者は自分の利用しやすい支部や相談室を利用可能です。
交通事故紛争処理センターで出来る事
交通事故相談センターでは、以下のようなサービスを受けられます。
相談
まずはセンターの担当員による相談を受けられます。相談に対応するのは交通事故の経験豊富な弁護士であり、法的な観点から正しいアドバイスを受ける事が可能です。
和解あっせん
相談の結果、被害者と加害者(保険会社)の間の調整が必要になった場合、センターに間に入ってもらって「和解あっせん」というサービスを利用できます。和解あっせんとは、センターが加害者(保険会社)と被害者の間に入り、話し合いを進める手続きです。自分たちだけでは意見が合わず解決できない場合でも、センターの担当員に調整してもらう事によって合意できるケースも多くあります。
和解あっせんは、成立または不成立まで続けられますが、人身事故のケースで3~5回程度、物損事故の場合に1~2回程度が標準となっています。また、担当員から「和解案」を提示してもらえるため、お互いにその内容を受け入れれば解決できます。
審査
審査は、和解あっせんをしてもお互いの意見が合わず合意できなかった場合に行われる手続きです。審査になると、センターの審査会がそのケースにおける損害賠償問題の解決方法を決定します。相手が保険会社や共済の場合には決定内容に拘束されるため、被害者さえ異議を申し立てなければその内容で解決する事が可能です。
ただし審査を利用できて審査の決定内容に拘束されるのは、相手が交通事故紛争処理センターと提携関係にある保険会社や一部の共済の場合のみです。提携関係にない共済や加害者本人が相手の場合には、相手が同意しないと審査によって解決する事は不可能であり決定内容にも拘束されません。
※審査決定があったとき、被害者は裁定通知を受けてから14日以内に態度を決める必要があります。何も返答をしなかった場合には不同意とみなされるので、同意する場合にはセンターに連絡を入れましょう。
費用について
交通事故紛争処理センターは、相談、和解あっせん、審査のどの手続きも利用料金がかからず無料となっています。
交通事故紛争処理センターを利用するメリット
- もめている相手と直接話さなくて良い
- 示談よりも賠償金額が高額になりやすい
- スピーディに解決できる
- 費用がかからない
交通事故紛争処理センターを利用して話し合いを進めるときには、加害者や保険会社の担当者と直接話す必要がありません。いったんトラブルになってしまった場合、相手と直接話をするのは大きなストレスとなり、話し合いもまとまりにくくなります。紛争処理センターを利用すれば、法律に詳しい担当者(弁護士)が間に入って調整してくれるので、解決につながりやすくなります。
交通事故紛争処理センターを使って話し合いや審査で解決する際には、被害者が自分で交渉をする場合よりも賠償金額が高額になりやすいです。センターの場合、任意保険基準よりも高額な法的基準を使うからです。最終的には法的基準より多少低めになる場合もありますが、任意保険基準よりはかなり高くなるので被害者にとっては得です。
紛争処理センターでトラブルを解決できる場合、訴訟よりも随分早く済みます。だいたい3ヶ月~半年で最終解決できるので、問題を長く引きずらずに済むメリットがあります。
交通事故紛争処理センターでは、弁護士に相談したり間に入って話をまとめてもらったり解決方法を決めてもらったり出来ますが、こうした対応について費用は一切かかりません。これは大きなメリットと言えるでしょう。
交通事故紛争処理センターを利用するデメリット
- 必ずしも被害者の味方になってくれるわけではない
- 相手がセンターと提携していなければ利用できない事がある
- 当事者が納得しなければ解決できない
- 時効が中断しない
- 遅延損害金を請求できない
センターの担当員は弁護士ですが、必ずしも被害者の味方になってくれるわけではありません。あくまで公正中立な立場から、交通事故トラブルの解決を目指す役割です。被害者が「親身になって守ってくれる」と期待して相談や和解あっせんを利用すると、あてが外れてしまうケースがあります。
交通事故紛争処理センターを利用すると、トラブルを解決できる可能性が高くなります。しかし審査を当然に利用できるのは、相手がセンターと提携している保険会社や共済の場合のみです。その他の場合、相手の同意がないとセンターのサービスを利用できません。
相手がセンターと提携している保険会社や共済であっても、審査の結論に被害者が納得しなければ、決定内容に効力は発生しません。相手がセンターと提携していない場合、相手が異議を申し立てる可能性もあります。最終的に解決につながらない可能性がある事は、デメリットと言えるでしょう。
交通事故後に長い時間が経過すると、損害賠償請求権が「時効」になる可能性が高くなります。時効が成立すると、加害者にも保険会社にも賠償金や保険金の請求が出来ません。裁判所で訴訟や調停を起こすと、その時点で時効を中断できるので権利を守る事が可能です。しかし交通事故紛争処理センターでの申し立てには時効中断の効力がなく、時効を止めたければ別途訴訟などを起こす必要があります。
交通事故の損害賠償金には、事故発生時から遅延損害金が加算され続けます。大きな事故の場合には、遅延損害金だけで数百万円となるケースもあります。ところが交通事故紛争処理センターで解決する場合には、遅延損害金は加算されないので金額的には低くなってしまいます。
交通事故紛争処理センターより弁護士に依頼した方が良い理由
「交通事故の示談交渉で保険会社や加害者とトラブルになったとき、交通事故紛争処理センターを利用するのは有効なのでしょうか?」
確かに交通事故紛争処理センターを使う事にメリットはあります。しかし、センターの担当員は被害者の味方になってくれるわけではありません。もしも担当員の弁護士が気に入らなかったとしても、変更してもらう事は不可能ですし、望んだ通りの結果になるとも限りません。
被害者の味方になって親身になって働いてくれる弁護士に示談交渉を依頼した方がメリットとしては大きくなります。
弁護士が示談交渉をするときには弁護士基準を使って示談金を計算するので、慰謝料やその他の賠償金は比較的高額になります。また示談交渉を弁護士に任せる事が出来るので、自分で対応する必要もなくストレスもかかりません。わざわざセンターまで出向き、相談に行ったり和解あっせんの期日に出頭したりする必要もありません。
またセンターを利用する場合であっても、弁護士に代理人を依頼する方が被害者にとって有利に進みます。和解あっせんでは弁護士がセンターの担当員を説得してくれますし、審査の際にも弁護士が被害者に有利になるよう主張や立証を展開してくれます。センターに出頭する際にも、弁護士に同行してもらえたら安心感も増すでしょう。
もしも交通事故トラブルが発生し、交通事故紛争処理センターの利用についてお悩みであれば、一度交通事故に強い弁護士に相談してみる事をお勧めします。