交通事故における民事裁判を選ぶべきメリットと流れ・手順
- 2019/4/22
- 2021/06/18
交通事故被害者が保険会社との示談交渉を行うにあたり、争点となるのが示談金の金額です。双方の意見の食い違いがうまく解消されない場合、示談では終わらず民事裁判へ発展していくこともあります。民事裁判は民事調停と並び、交通事故の損害賠償やお金の貸し借り、不動産の売買などのトラブルを裁判所で解決しようという手続きです。
交通事故で民事裁判をするかどうか決めるときには、さまざまな観点から慎重に考えていくことが大切です。
Contents
民事裁判を選択する理由
民事裁判は、どんなケースにおいてもベストな方法とは言えません。場合によっては示談交渉や民事調停だけで済むこともあります。民事裁判は手間もかかるため、極力必要なときに選択したい方法です。より正当な金額の損害賠償を受け取れることが、民事裁判の魅力のひとつですが、なかには示談交渉とさほど変わらない場合もあります。そのためやみくもに裁判を選択するのではなく、状況によって判断することが大切です。
交通事故の被害に遭ったとき、以下のような民事裁判を選択するべき理由に該当するケースの場合には民事裁判を検討してみましょう。
話し合い(示談交渉・民事調停)がうまく行かなかった
示談交渉は保険会社(加害者)との間で行われ、通常では加入している保険会社の基準によって金額が決められます。保険会社も民間の営利企業であるため、少しでも支払金額を抑えようとする傾向があります。そのため、被害者側がその金額に不満を持ち、話し合いが平行線をたどることもあります。
また保険会社では、話し合いの場に示談のプロが臨みます。一方で被害者側は、そのような交渉をしたことのない素人が応じることになるでしょう。このような状況では、被害者側が話し合いで丸め込まれることも少なくありません。示談を成立させる前に、金額の相場などを調べてみることが大切です。
話し合いでの折り合いがつかない場合には、裁判に頼る解決方法として、民事裁判を起こした方が良いと考えられます。民事調停も、強制的に判決を出すものではなく、うまく行かなかった場合には同じような道のりをたどることになるためです。
過失割合に不満がある
過失割合とは、交通事故加害者と被害者の過失責任を割合で表したものです。7対3、80対20などと表し、この割合が損害賠償額に大きく影響します。損害賠償額は、過失割合が高い方と低い方で相殺(過失相殺)した金額が支払われることになります。
過失割合が10対0の場合はともかく、過失割合が少しでも自分にある場合には慎重な見極めが必要です。なぜなら慰謝料だけでなく、治療費や逸失利益などまで相殺の対象となり、大きく減額される恐れがあるためです。保険会社から提示された割合に不満があった場合、裁判を起こすことで判決結果に委ねることも検討が必要となります。
自賠責の後遺障害等級認定に不満がある
自賠責保険には後遺障害等級というものがあります。後遺障害を等級で分け、それに合わせて保険金額や慰謝料の額を定めるという仕組みです。後遺障害を負ったときに、障害の重さごとに等級を決めます。後遺障害が重いほど金額は大きくなりますが、そもそも後遺障害の等級に納得できないということも起こり得るものです。
※後遺障害等級は損害保険料率算出機構が決定するもので、不満があれば異議申し立てを行います。それでも等級に納得できなかった場合のみ、裁判へと進みます。なかなか決定を覆すのは難しいものの、可能性はあります。
後遺障害が重い・逸失利益が大きい
多くのケースで、後遺障害の等級や逸失利益が大きい場合には、損害賠償額も大きくなります。そのような場合には保険会社と揉めることも増え、裁判まで進むケースが多いです。予想される慰謝料や逸失利益が大きい場合には、最初から裁判まで進むことを予測して動き出すことも必要でしょう。
民事裁判の流れ
民事裁判では、提訴を行い、請求したい金額や根拠を裁判所に伝えて協議し、判決という流れになっています。まずは訴状を作成して提出する「提訴」を行います。提訴後は月に1回程度ずつ出廷する日が決まり、そこで協議を進めます。証拠書類として提出する準備書類や証拠を元に進み、法廷ドラマのような激しいやり取りはありません。原則的には、不満がある点、主張したい点に対して証拠を提出し、保険会社の言い分に反論していきます。
民事裁判では、和解と判決の2つの解決方法があります。判決の前に裁判所から出された和解案を検討し、譲歩できるか判決を待つか判断しなければいけません。和解ならそこで解決となり、保険金が支払われます。和解に応じない場合には、判決が出ます。
裁判を起こしてから解決するまでの手続きの流れは以下の通りです。
裁判所に訴状を提出
裁判を起こす際、はじめに裁判所へ訴状を提出しなければ裁判は始まりません。「どういう内容の判決」を希望しているかという事を記載する書面です。原告・被告の使命住所や求める損害賠償金額、事故の内容などを書式に沿って記載します。
口頭弁論
訴状を裁判所へ提出してから1~2ヶ月後、法廷にて原告・被告双方とも自分の主張を書面に記載し提出します。主張がすんなり通れば問題ないですが、大抵主張反論の繰り返しになり、何度か行うことになります。
証拠集め・提出
主張がある程度為された段階で、争点がどこなのかを整理します。その後、主張が正しいか否かを判断するため、証拠を提出します。
-
【証拠として認められるもの】
- 目撃証言
- 診療報酬明細書
- 勤め先の源泉徴収
- けがをした場合は医師の診断書
- 入通院の期間が分かるもの
- 休業中の日数
- 後遺障害等級の認定
和解協議
証拠がある程度で揃った後、裁判所から和解案が提示されます。和解の場合、被害者側からすればある程度譲歩する必要があるケースは珍しくありません。そのため、和解に応じる場合は必ず弁護士と相談することをおススメします。
判決
和解に応じない場合、判決が下るまで裁判を続けます。敗訴した場合、敗訴した側が控訴しなければその時点で裁判は終了となります。
民事裁判のメリットと交通事故の争点
民事裁判を起こすメリットは、示談や調停では結論が出なかった場合でも、裁判なら最終的な結論を必ず出すことができる点です。また、裁判をすることで過去の判例に基づいた妥当な額の損害賠償を請求することができ、示談よりも高額になりやすい点もあげられます。
交通事故の裁判では、主に過失割合、慰謝料の金額、治療費、後遺障害の介護費関連、逸失利益などが争点になります。なかでも過失割合は、損害賠償額に大きな影響を与えるため重要です。また治療に関しては、期間についても争う場合があります。保険会社では、一方的に治療の終了を告げて治療費を打ち切ることがあり、妥当性について争うのもポイントです。
また介護費や逸失利益では、余命が争点になることもあります。なぜなら保険会社では、余命を短く計算して金額を抑えようとするケースがあるためです。
裁判結果に納得できない場合
裁判は、判決が出れば終わりとなります。しかしその裁判結果に不服がある場合、「控訴」という方法でさらに争うことも可能です。控訴する場合には、判決の2週間以内に行います。控訴するには「控訴理由書」を提出することが必要です。その後、相手方が「答弁書」を提出して審理が行われ、和解か判決で終わります。
それでも納得できない場合、「上告」という最高裁で争う方法もありますが、交通事故では控訴までが一般的です。ただし控訴することで良い結果が出るとは限らず、時間もかかります。
裁判を起こすのであれば弁護士へ依頼した方が有利
民事裁判を起こすのであれば、法律の専門知識が必要になります。また裁判の手続きは煩雑で難しく、証拠や書類の準備にも手間がかかるでしょう。そのため、民事裁判は全く法律の知識のない人がやってもうまく進まないケースもよく見受けられます。
裁判を起こすのであれば、弁護士に依頼して代理人をやってもらう方が安心でしょう。弁護士であれば、法律的な解釈が問われる事案にも強く、裁判でも代理人として出廷してもらえます。被害者本人が出向く必要がほとんどありません。
難しい手続きや期間の長い裁判は、心身ともに大きな負担となるでしょう。専門家である弁護士へ依頼した方が、より賠償金を獲得できる可能性も高まります。自分たちだけで対応しようとせず、弁護士に頼ってみることがお勧めです。いきなり依頼するのが不安な場合、まずは相談から始めてみましょう。
★相談の際には、弁護士は専門家の立場から裁判で増額できる金額などを元に、裁判の可否を提案します。早い段階から弁護士に相談することで経過を把握してもらえるため、示談交渉の段階で相談しても良いでしょう。弁護士であれば、示談交渉でも被害者本人や家族よりも有利に話を進められます。また、裁判に先立ち、示談交渉のアドバイスなどを受けることもできるでしょう。