【後遺障害認定】デメリットは無い!?被害者請求に重要な5つの必要書類
- 2019/3/20
- 2021/08/03
- この記事をざっくり言うと…
- 慰謝料は弁護士へ依頼するのが最も貰える
- 後遺障害申請には全部で5つの書類が必要
- 慰謝料請求期間は3年以内が原則
交通事故の被害による怪我で回復が難しい症状が残った場合、その程度によっては後遺障害であると認められ、後遺障害等級が割り当てられます。
この後遺障害等級は、加害者側への慰謝料請求額にも大きく関係してくるのです。
<後遺障害であると認められるには、以下のような条件を満たす必要があります>
- 長期的に見て症状がよくも悪くもならない状態(症状固定)であること
- 症状と交通事故による被害との因果関係が証明されること
- 症状の医学的証明(一部については医学的説明)がなされること
- 症状によって労働能力が低下もしくは喪失したこと
- これらの条件を満たしたうえで、自賠責保険の後遺障害等級に当たるもの
Contents
各後遺障害等級慰謝料の支払い限度額
後遺障害等級 | 自賠責保険 | 任意保険 | 弁護士会 |
要介護の第1級 | 1,600 | – | – | 要介護の第2級 | 1,163 | – | – |
第1級 | 1,100 | 1,850 | 2,800 |
第2級 | 958 | 1,450 | 2,370 |
第3級 | 829 | 1,150 | 1,990 |
第4級 | 712 | 850 | 1,670 |
第5級 | 599 | 750 | 1,400 |
第6級 | 498 | 650 | 1,180 |
第7級 | 409 | 550 | 1,000 |
第8級 | 324 | 450 | 830 |
第9級 | 245 | 350 | 690 |
第10級 | 187 | 250 | 550 |
第11級 | 135 | 200 | 420 |
第12級 | 93 | 150 | 290 |
第13級 | 57 | 65 | 180 |
第14級 | 32 | 45 | 110 |
単位:万円
※任意保険基準の金額は目安です
※各後遺障害等級に関する概要は上記表の該当等級をクリックしてください
等級別に認定される後遺障害
後遺障害等級認定の等級の決め方は、部位や程度によって1~14級までの等級と140種類35系列の後遺障害に細かく分類されています。認定審査の書類内容をあらかじめ設けられた基準に照らし合わせてどの等級にあたるかを審査し後遺障害等級の認定が行われます。
後遺障害等級認定には3つの決まりが適用されます。以下で見ていきましょう。
- 併合
- 加重
- 準用
障害が2つ以上ある場合、原則として重いほうの等級になります。ただし、併合による等級の繰り上げについては様々な例外やルールがあります。
既に障害をお持ちの方が、交通事故で障害の程度が重くなった場合を言います。賠償の対象は、
(事故後の等級)-(事故前の等級)=差額
障害等級表に載っていない障害については、障害の内容などから等級を定めることを言います。
※等級認定については、書面で審査が行われますが基準があいまいなため判定する担当者によって変化する場合もあり、適正な認定を受けれるか不透明なところもあります。
自賠責保険・任意保険・弁護士会の違いとは
自賠責保険基準
被害者に対する最低限の補償を目的とした保険です。3つの中で最も金額が低い一方、被害者に重大な過失がない限り過失割合が考慮されることはありません。
任意保険基準
任意で契約している保険会社が設けた基準です。明確な基準は保険会社によって様々で、自賠責保険基準より高めですが、弁護士会基準より低く設定されています。
弁護士会基準
弁護士会基準は3つの後遺症基準の中では最も高額です。裁判の判例などを元に算定され、示談交渉時にも同基準を採用します。
弁護士会基準が一番被害者にメリットがあると言える一方、後遺障害等級によって大きく獲得できる慰謝料が異なるため、申請の際は書類不備やタイミングに細心の注意を払う必要があります。
後遺障害の認定を得るために必要な5つの書類
後遺障害とは、交通事故の怪我により完治が難しい症状が残る後遺症の中で、自賠責保険が定めた後遺障害の条件に該当するものであり、保険会社に対して下記のような書類を送付し審査を受けることで認定されます。
【後遺障害申請に必要な書類】
書類名 | 受取及び申請場所 | 手数料 |
自賠責保険支払請求書兼支払指図書 | 任意保険会社から送付 | – |
交通事故証明書 | ・事故現場を管轄する各都道府県又は最寄りの自動車安全運転センター窓口 ・郵便振替による交付申請 ・インターネットからの申込 ※申請用紙は警察署、交番、自動車安全運転センターにて受取可能 |
1通540円 ・郵便振替の場合+70円 ・コンビニの場合+130円 |
診療報酬明細書及び診断書 | ・任任意保険会社が管理している場合、コピーにて送付してもらう ※国民健康保険を使用している場合、指定の診断書を使用・作成するよう病院へ依頼 |
– |
後遺障害診断書 | 病院側にて作成してもらう | – |
レントゲン、MRI画像 | – | – |
自賠責保険支払請求書兼支払指図書
任意保険会社から送付される請求セットに同封されています。記載項目として、被害者氏名や住所連絡先、慰謝料の振込先指定などがあります。
※サンプルとして当サイトのこちらをご覧ください。
交通事故証明書
事故発生を証明する書類となり、発生日時や場所当事者の氏名や住所が記載されています。
事故の加害者や被害者・交付を受けることによって正当な利益を受ける人(保険金受取人等)が申請できます。
診療報酬明細書及び診断書
任意保険会社が診断書や診療報酬明細書を保管しているケースが多い為、コピーを送付する方法があります。
また、初診から国民健康保険や労災保険を使用している場合、加害者側の任意保険会社から送付される請求キットに同封されている診断書を使用、医師に作成してもらう必要があります。
後遺障害診断書
基本的に医師へ依頼し作成してもらう書類となります。作成するタイミングとしては症状固定と判断されたタイミングで作成することを推奨します。
レントゲン、MRI画像
損傷の度合いを知る際に必要となります。
2つの等級申請手続きとメリット・デメリット
後遺障害等級の認定後、損害賠償請求ができるのは症状固定の状態になってから3年以内とされています。
そして、後遺障害等級の認定を受けるためには、方法が2つあります。
事前認定
事前認定とは、加害者側の任意保険会社に、被害者に代わって後遺障害認定手続きを行うよう依頼することです。
この方法における手続きの流れは以下のとおりです。
- 医師に「後遺障害診断書」を作成してもらう
- 「後遺障害診断書」を加害者側の任意保険会社に提出する
- 任意保険会社は、治療診断書や検査資料、交通事故証明書など必要書類を集める
- 任意保険会社が加害者側の自賠責保険会社に認定請求を行う
- 損害保険料率算出機構で調査を受ける
- 認定の可否について調査結果が出る
- 自賠責保険会社から任意保険会社を通じて、被害者に通知される
- メリット
- 「後遺障害診断書」を用意するのみで済むため手続きが楽
- デメリット
- その他の資料収集を加害者側の任意保険会社に任せてしまうことになるため、加害者に有利な資料が認定申請に使用される可能性がある
被害者請求
被害者請求とは、後遺障害等級手続きをすべて被害者が行う方法です。その流れは、以下のようになります。
- 医師に「後遺障害診断書」を作成してもらう
- その他、治療診断書や検査資料、交通事故証明書など必要書類を取り寄せ、または自分で用意する
- 書類をそろえたら加害者側の自賠責保険会社に認定請求を行う
- 損害保険料率算出機構で調査を受ける
- 認定の可否について調査結果が出る
- 自賠責保険会社から直接被害者に結果が通知される
被害者請求では、被害者自身が適切な資料をそろえることで、状況に見合った後遺障害等級の認定を受けられる可能性が高いです。一方で、膨大な書類を自分自身でそろえる必要があることから、手続きが煩雑になるというデメリットがあります。
以上のような流れとメリット・デメリットを考慮すると、より被害者に有利になるのは被害者請求であり、法の専門家も被害者請求を勧めることが多いです。
後遺障害の申請可能期間と申請までの期間
後遺障害の申請は、事故後6ヶ月以降が目安であると言われています。その前提として、ケガが将来的に回復の見込みが無い状態、所謂症状固定と判断される期間が約6ヶ月であり判断される前に申請すると高確率で認められません。
そのため、症状固定後の申請が理想的ですが自賠責保険会社に対する支払請求の一環として行うため、時効期限内に行わなければなりません。
被害者請求の場合 | 加害者請求の場合 | |
傷病の場合 | 事故日から3年以内 | 加害者が被害者・病院などに賠償金を支払ったときから3年以内 |
後遺障害を負った場合 | 症状固定日から3年以内 | |
死亡の場合 | 死亡日から3年以内 |
※認定に不満がある場合再度審査を行うことが出来ますが、新たな資料がない限り望んでいる認定が下るケースはほとんどありません
後遺障害等級認定における症状固定の3つの重要性
後遺障害等級認定を受けるに当たり、症状固定と判断されることは重要な位置を占めます。では、症状固定とその重要性について見ていきましょう。
損害賠償の観点から見た症状固定
前述でも少し触れたように、症状固定の時点より前は傷害部分、それより後は後遺障害部分と分類され、慰謝料などの損害賠償請求に違いがあります。症状固定と主治医により判断されると、その時点で傷害部分の期間は終了します。
そして、治療費や入通院慰謝料、休業損害などが請求できなくなるのです。この時点で、実質賠償期間は終了することになります。同時に、後遺障害慰謝料や逸失利益といった賠償を受けることが可能になるのです。
後遺障害等級の認定は症状固定の後
後遺障害等級の認定を受けるには、症状がよくも悪くもならない症状固定の状態であると認められる必要があります。これが後遺障害等級認定の条件の1つとなるため、症状固定は重要な分岐点となるのです。
たとえば、治療を受けていて症状が軽くなっている、また重くなることもあるなど不安定な状態である場合には、後遺障害とは認められません。
任意保険会社から症状固定の話が来たら注意
加害者側の任意保険会社は、治療からある一定の期間を過ぎると、医師の判断がおりないままで症状固定とする旨を被害者に勧めることがあります。これは、賠償期間を終了させ、賠償額を最小限に抑えたいという任意保険会社の意図によるものです。
しかし、症状固定と判断するのはあくまで医師です。任意保険会社の勧告のままに症状固定を急いでしまうと、任意保険会社のペースで後遺障害等級認定の手続きを進められてしまい、被害者にとって不本意な賠償額しか得られないこともあります。
詳しい弁護士にサポートしてもらうことが大切
交通事故の後遺障害等級の認定には、膨大な情報や資料、書類などが必要となります。しかし、認定申請で加害者側の任意保険会社に任せっきりにする、また慰謝料の金額などについて自身が直接任意保険会社と交渉するなどは避けた方が無難です。
このような場合は、たいてい加害者側に有利な方向に持っていかれてしまいます。後遺障害等級認定やその後の慰謝料額の決定などは、弁護士を通じて行うことが重要です。