【後遺障害1級】6つの重要書類と認定条件・3つの慰謝料基準による相場観
- 2019/3/22
- 2021/06/17
後遺障害1級は、交通事故によって残った後遺障害の中でもっとも重い等級です。その障害状態は社会復帰不可能とされる重いものです。後遺障害1級が認められる事例は以下の通りです。
- 両眼の失明
- 咀嚼と言語機能の喪失
- 両腕をひじ関節以上で失った状態
- 両腕の機能を失った状態
後遺障害1級には要介護と介護なしがありますが、どちらも認められれば高額な損害賠償請求が可能となります。その後の生活や介護などの費用を得るためにも、正しく後遺障害に認定されることが大切です。
今回は、どのようなケースで後遺障害1級と認められるか、認定のポイントや条件、さらに慰謝料相場などを解説します。
Contents
後遺障害1級に当てはまる症状と賠償金額事例
後遺障害等級とは
交通事故に遭ったことが原因で残った機能障害や神経症状を示す言葉です。医学的に交通事故が原因と認められるものだけを指します。
1級 | 2級 | 3級 | 4級 | 5級 | 6級 | 7級 |
8級 | 9級 | 10級 | 11級 | 12級 | 13級 | 14級 |
※該当等級をクリックすると各ページへ移動します。
後遺障害は、障害によって労働能力が低下したり、なくなったりしたものであると定義されています。その程度によって、自賠責保険が等級を定めています。等級によって自賠責保険の保険金額が決まり、1級の保険金額はもっとも高額です。以下の表にて部位ごとに症状を記載しています。
後遺障害1級の部位ごとの障害状況
部位 | 後遺障害 |
眼の障害 | 1号. 両眼が失明したもの |
口の障害 | 2号. 咀嚼及び言語の機能を廃したもの |
上肢の障害 | 3号. 両上肢を肘関節以上で失ったもの 4号. 両上肢の用を全廃したもの |
下肢の障害 | 5号. 両下肢を膝関節以上で失ったもの 6号. 両下肢の用を全廃したもの |
介護を要する後遺障害 | 1号.神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 2号. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
【詳しく解説】
1号 | 交通事故によって両目が失明した場合に該当しますが、眼球を失ってしまったケースに関しても該当します |
2号 | 咀嚼機能についてはスープのような流動食以外食することが出来ない場合を指し、言語機能は以下の音のうち3つ以上発音できない場合該当します 口唇音:ま行、ぱ行、ば行、わ行、ふ 歯舌音:な行、た行、だ行、ら行、さ行、しゅ、ざ行、じゅ 口蓋音:か行、が行、や行、ひ、にゅ、ぎゅ、ん 咽頭音:は行 |
3号 | 両腕を根元又は肘以上を失った場合 |
4号 | 両腕自体失っていないが、肩から下が動かない又は可動する領域が10%以下となった場合該当します。麻痺又は硬直どちらでも問題ありません |
5号 | 両足を根元又は膝以上を失った場合 |
6号 | 股やひざ・足全体が完全に動かない又は可動する領域が10%以下となった場合該当します |
後遺障害1級の要介護の症状
後遺障害等級1級で要介護は、脳や神経に障害を残したものを1号、胸部や腹部などの内臓に障害を残したものを2号としています。1号は、植物状態や脊髄損傷などで、生命の維持のために常に介護が必要な状態です。2号も基本的に寝たきりの状態で常時介護となります。
後遺障害1級の慰謝料相場・逸失利益と3つの慰謝料基準
後遺障害1級では、請求できる慰謝料相場も大変高額となります。しかし、請求の仕方次第では金額が変わる可能性があります。十分な金額を受け取れないこともあるため注意が必要です。慰謝料の基準には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準があります。
弁護士基準
弁護士基準(裁判所基準)では、過去の判例に基づいて請求することで他の2つよりも高額な金額を受け取れる可能性があります。裁判を行わなくても、弁護士基準の慰謝料相場をもって示談交渉も可能です。慰謝料に関しては自賠責基準では1100万円のところ、2800万円が相場となります。
自賠責基準
3つの中で、慰謝料がもっとも低い基準です。後遺障害1級の後遺障害慰謝料は、要介護かどうかなどで金額に幅がありますが、自賠責基準の慰謝料相場は、1100万円~1800万円です。要介護で被扶養者がいる場合がもっとも高く、満額の支払いとなります。また入院慰謝料は、4,200円×入通院期間、または4,200円×入通院日数×2の低い方の金額になります。
任意保険基準
任意保険基準は、保険会社がそれぞれに算出方法を設定しているため、相場は明確ではありません。一般的に、自賠責基準よりは高くなる傾向です。ただし保険会社は、できるだけ支払う保険金を低く抑えようとするため、相場より低い金額しか受け取れないケースもあります。
後遺障害以外の慰謝料
請求項目 | 内容と慰謝料の相場 |
---|---|
入通院慰謝料 | 4,200円/日 【相場】 ・通院1ヶ月につき10~20万円 ・入院1ヶ月につき約30~50万円 |
後遺障害慰謝料 | 自賠責保険の後遺障害等級第1級では1100万円 |
死亡慰謝料 | 一家の大黒柱:2,600~3,000万円 これに準ずる者(配偶者):2,300~2,600万円 それ以外の者:2,000~2,400万円 |
後遺障害慰謝料以外の損害賠償費
治療費関係費 | 治療費や入院費が該当 |
看護料 | 通院付添費:2050円/日 |
入通院慰謝料 | 4200円/日 |
入院雑費 | 1500円/日 |
通院交通費 | 通院に要した交通費など |
その他 | 将来介護費・装具購入費・学費・家庭教師代など |
休業損害 | 5700円/日 |
傷害慰謝料 | 入通院期間に基づいて算定(あまりにも入院などが長い場合) |
逸失利益 | 後遺障害が残ったことで失われた利益 【逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×中間利息控除係数】 |
後遺障害1級の判例
名古屋地方裁判所判決、平成13年(ワ)第1835号事件
概要:第二通行帯を北進していた加害車が左折のため第一通行帯に進入し、第一通行帯を北進していた被害車(自動二輪)に衝突した。
慰謝料:3,200万円(逸失利益として1億1019万1065円認められました)
千葉地方裁判所佐倉支部判決、平成16年(ワ)第31号事件
概要:路上駐車車両を追い越す際、センターラインを越えて対向車線に進入。対向車線上で知人の車両を誘導していた被害者にブレーキをかけずに衝突した。
慰謝料:4.150万円(逸失利益として7244万1811円認められました)
後遺障害1級と認定されたら受け取れる労災と補償
後遺障害が残ってしまった方への補償制度が下記です。
- 国民年金・厚生年金
- 労災年金
- 介護費用の支給
- 障害福祉サービス
後遺障害になるまでに支払っていた国民年金・厚生年金のことです
後遺障害1級が認定されると、ろうさいねんきんから障害年金・障害特別支援金・障害特別年金の3つが受け取れます。
受給資格種別ごとに下記の範囲で月額支給されます。
特Ⅰ種 | 自立移動・摂食が不可能・意思疎通が不可能など | 68,440~136,880円 |
Ⅰ種 | 後遺障害第1級1号・2号に該当する方 | 58,570~108,000円 |
Ⅱ種 | 後遺障害2級に該当する方 | 29,290~54,000円 |
地方自治体が行なっている障害者補償で様々なサービスを受けられます。
<サービス内容>
・介護給付
・相談支援給付
・補装用具の給付
後遺障害1級の認定してもらうための重要な6つの書類
後遺障害1級は後遺障害等級の中で最も重く、私生活に大きな影響を及ぼします。認定申請の重要性は説明するまでもないですが、認定が受けられないという事だけは避けなければなりません。後遺障害の申請は事前認定と被害者請求と呼ばれる二つの方法が存在します。
事前認定と被害者請求の違い
事前認定とは
事前認定又は被害者請求に関わらず、後遺障害診断書と呼ばれる診断書を医師に作成してもらう必要があります。作成後、加害者側の任意保険会社に提供すれば自賠責保険会社への対応を被害者自ら行う必要はなく、任意保険会社が代行してくれます。
被害者請求とは
事前認定とは違い、後遺障害診断書だけでなく以下の必要書類を被害者自ら集める必要があります。ただし、事前認定の場合は任意保険会社の書類ミスなどにより認定が遅れる又は受けられない可能性がありますが、被害者自ら対応するため書類ミスなどの不備に気付く事が出来ます。
被害者請求を行う際に必要となる書類は以下の通りです。
書類名 | 受取及び申請場所 | 手数料 |
自賠責保険支払請求書兼支払指図書 | 任意保険会社から送付 | – |
交通事故証明書 | ・事故現場を管轄する各都道府県又は最寄りの自動車安全運転センター窓口 ・郵便振替による交付申請 ・インターネットからの申込 ※申請用紙は警察署、交番、自動車安全運転センターにて受取可能 |
1通540円 ・郵便振替の場合+70円 ・コンビニの場合+130円 |
診療報酬明細書及び診断書 | 任意保険会社が管理している場合、コピーにて送付してもらう ※国民健康保険を使用している場合、指定の診断書を使用・作成するよう病院へ依頼 |
– |
後遺障害診断書 | 病院側にて作成してもらう | – |
レントゲン、MRI画像 | – | – |
後遺障害認定を受けるには、まず正確な自覚症状と他覚所見が必要です。他覚所見とは医師による診断のことで、レントゲンなどの検査画像の診断もあります。自覚症状、他覚所見をもとに後遺障害等級を決定するために使う診断書が作られるため、これらは大変重要なものです。
医師に正しい診断書を書いてもらうには、自覚症状を伝えるなど、治療中からのコミュニケーションが大切になります。後遺障害等級1級の場合には、被害者自身がコミュニケーションを取れない、医師を選べないケースも多いため、家族の方が十分に配慮することも必要となります。
後遺障害等級の申請可能な期間と認定が下りない場合の対応方法
交通事故発生後、通院を続けると必ず症状固定の判断時期にあたります。通常は6カ月程度で判断されますが、1~3カ月以内に判断されることもあります。症状固定が確定後、後遺障害等級申請を行う方が認定が下りやすく、確定前の場合認定が下りないケースが多々あります。
被害者請求の場合 | 加害者請求の場合 | |
傷病の場合 | 事故日から3年以内 | 加害者が被害者・病院などに賠償金を支払ったときから3年以内 |
後遺障害を負った場合 | 症状固定日から3年以内 | |
死亡の場合 | 死亡日から3年以内 |
後遺障害認定の時効は基本的にありませんが、自賠責保険会社に対する保険金支払請求の一環として後遺障害申請を行うため、保険金支払請求の時効期間内に行う必要があります。
以下被害者請求と加害者請求それぞれのケースによる時効期間です。
後遺障害1級として認定されるためには、正確な症状申告と適切な検査が必要です。後遺障害の等級は、後遺障害慰謝料をはじめとした損害賠償請求に大きな影響を与えます。正しく認定してもらい、少しでも交通事故のつらさや将来の不安を軽減することが大切です。
※認定が下りない場合、自賠責保険会社に対して異議申し立てを行うことができます。
後遺障害1級の慰謝料は弁護士に依頼すれば増額できる!?
後遺障害1級では、後遺障害慰謝料だけでなく、将来の労働能力の喪失による逸失利益などもまとめて損害賠償請求を行います。争う金額は高額になり、やり方次第では受け取れる金額にも大きな差が出るかもしれません。
弁護士に依頼をすれば、弁護士基準で請求することができ、上記にも記載した通り自賠責基準や任意保険基準よりも高い金額を請求でき、増額できる見込みも高くなります。費用はかかっても、それ以上のメリットが得られるため、依頼することがベストです。