交通事故後による後遺症と症状固定と判断前後にやっておくべき2つのポイント
- 2019/4/18
- 2021/06/08
交通事故で怪我を負った場合、状況によってさまざまな初期症状が現れます。ときには、しばらく自覚症状がなく時間が経ってから発症する例もあるのです。
こちらでは、交通事故による怪我でよくある症状と後遺障害が残った場合について説明します。
Contents
交通事故後の代表的な初期症状例
交通事故による怪我では、以下のような初期症状が出るケースが考えられます。
症状 | 受診先 |
---|---|
むちうち症、捻挫、骨折 | 整形外科 |
外傷、傷跡 | 形成外科、皮膚科 |
目が見えにくい | 眼科 |
耳が聞こえにくい | 耳鼻咽喉科 |
脊髄損傷 | 整形外科 |
不眠、倦怠感などのバレリュー症候群 | ペインクリニック、麻酔科 |
歯の欠損 | 歯科 |
意識障害 | 脳神経外科 |
また、以下のような症状が事故から数日後に発症する可能性もあるため、
交通事故後は直ぐに病院へ行かなければなりません。
外傷によるもの
たとえば、皮膚や筋肉などを損傷する打撲や捻挫による痛みは、交通事故による怪我として一般的なものでしょう。また、広く知られるむち打ちについても、筋肉の損傷による痛みを伴うことがあります。さらに骨折をした場合にも強い痛みを感じ、関節付近であればその箇所をうまく動かせなくなります。
神経系統の損傷によるもの
交通事故の衝撃で脊髄やそこから分岐した神経系統が損傷した場合、外傷による痛みとは別に首や肩、腕、足などに疼痛を伴うケースもよく見られます。そしてむち打ちでは、上記で触れた外傷による痛みのほかに、頸椎に衝撃がかかることからそこを通る神経系統も傷つきやすく、痛みが現れることも少なくないのです。また神経系統の損傷では、痛みのほかにしびれが生じることもあります。
めまい、吐き気など
めまいや吐き気などの症状は神経症状に数えられるもので、むち打ちなどで頸椎に衝撃が加わったことで交感神経が優位になることで発生します。また頭部に衝撃を負った場合にも、脳出血や脳脊髄液減少などによってめまいや吐き気などが生じるケースも多数あります。
記憶力や集中力の低下、感覚異常など
交通事故で強い衝撃を頭部に受けた場合、記憶力や集中力が低下したり手足や目・鼻・口などの感覚に異常を感じたりすることがあります。これは脳を損傷することにより起こる症状で、放置すると高次脳機能障害を残す危険性が高いです。
初期症状がまったくない場合も
交通事故に遭った直後には、上記にあげた初期症状をまったく感じないことがあります。そのため、症状を放置しがちになるのです。
交通事故による初期症状を感じない理由には、以下のことが考えられます。
興奮状態により一時的に麻痺している
これは痛みに対する現象ですが、予期せぬ交通事故によって脳が興奮状態に陥り、アドレナリンなどの神経伝達物質が分泌されて一時的に痛みを感じにくくなっている可能性があります。このような場合、交通事故に遭った直後にはまったく症状を感じなくても、しばらくして興奮状態が収まると強い痛みに襲われるのです。
しばらく時間経過があってから現れる症状も多い
たとえばむち打ちの場合、首に衝撃を受けてから数時間~数日後になってやっと各所に痛みやしびれが発生することがあります。これは、頸椎周辺の筋肉が損傷することにより骨を支えきれなくなり、頸椎をはじめとして脊椎全般への歪みが徐々に起こるためと考えられます。さらに頭部に衝撃が加わった場合、脳脊髄液の減少や脳出血などが時間をかけて進行するケースも見られ、自覚症状が現れるのが数週間後になることもあるのです。
以上を踏まえると、冒頭述べた通り交通事故直後にたとえ初期症状が軽い・まったく感じない場合でも、速やかに医療機関の診察を受けるのが得策です。また、時間が経って症状が現れた後に受診した場合、交通事故との因果関係が薄いと判断されて慰謝料請求に問題が生じるケースもあるため、注意が必要です。
それぞれの症状に対する症状固定までの期間
交通事故の際にけがをし、通院することになったという方も少なくありません。しかし、治療を継続しても事故前の状態に回復しないまま症状が固定してしまった場合、後遺障害についての損害賠償請求が可能となります。回復しない(症状固定)と見極められる期間や症状固定後に行うべき手続きなどを解説します。
症状固定として判断される期間は!?
症状固定の目安は3~6ヶ月が目安ですが、ケガの種類や被害者状態によって異なるケースが多々あるため、明確に示すことが出来ません。しかし、打撲やむち打ち、骨折など交通事故でよくみられる事例はおおよそ示すことができます。
怪我の種類 | 症状固定の時期の目安 |
---|---|
打撲 | 3ヶ月 |
むちうち | 6ヶ月 |
骨折 | 3ヶ月以上 |
醜状障害 | 6ヶ月以上 |
高次脳機能障害 | 1年以上 |
それぞれの解説は以下の通りです。
打撲の症状固定:3ヶ月
打撲はあざになりやすいケースとそうでないケースがありますが、比較的分かりやすい症状です。打ち所が悪い場合、後遺障害として残る可能性がありますが判断期間はケースバイケースです。
ですが、後遺障害として認定されるケースはおおよそ3ヶ月以上の通院・治療期間を経て症状固定となります。
むちうちの症状固定:6ヶ月
むち打ちは打撲とは異なり、目に見えにくい症状です。そのため、客観的に証明するのは非常に難しく、後遺障害認定には相応の治療期間や通院日数が必要となります。
そのため、後遺障害として認定される場合、最低でも6ヶ月以上の治療を受けなければいけません。
骨折系の症状固定:3ヶ月以上
変形障害や短縮障害、骨折などのけがは遅くとも6ヶ月で症状固定になります。
治療方針によってはプレートやボルトを埋め込むケースもありますが、その場合症状固定に時間を要します。痺れや痛みなど神経症状が残る場合はさらに症状固定に時間がかかります。
醜状障害の症状固定:6ヶ月以上
傷が完治後、6ヶ月以降を目安に症状固定となります。ただし、痕跡を改善する治療方針を取る場合は長時間治療を要する為、症状固定と判断されるまで2年以上かかる場合があります
高次脳機能障害の症状固定:1年以上
急性期症状が回復、受傷してから一年以上経過した時点で症状固定か判断することになります。
症状固定になるまで通院することが大切
交通事故の怪我で治療を受けるにあたっては、損害賠償の面から見てきちんと継続して通院することが大きなカギとなります。症状固定と医師に判断される前に治療をやめたり、断続的な治療しか受けなかったりすると、もし症状が悪化しても交通事故との因果関係を示すことが困難になり、治療費などの賠償を受けにくくなるのです。
さらに後遺障害等級の認定を受ける際、継続した治療を受けた上で症状固定と判断されたことをカルテや診断書で示すことができないと、認定が下りないことも考えられます。そうなると、後遺障害慰謝料などの賠償を受けられなくなってしまうのです。
症状固定以降すべきことが重要!?慰謝料請求の為の重要な3つのポイント
交通事故が原因で残った症状の有無によって、適切な損害賠償を受けるためにすべきことが異なります。特に、症状固定と医師に判断された後には、後遺障害慰謝料を受けるために後遺障害等級の認定を受けることが求められるのです。
後遺障害等級認定には、加害者側の任意保険会社に手続きを依頼する事前認定と、被害者側で直接加害者側の自賠責保険会社に手続きを行う被害者請求と2つの方法があります。
こちらでは、より被害者に有利な状況となる被害者請求の方法について紹介します。
後遺障害診断書の作成を医師に依頼
後遺障害等級認定の申請をするには、医師が作成する後遺障害診断書が必須となります。この診断書には、申請のために必要な内容が詳細に記載されている必要があるため、できれば受診する時点で交通事故案件に強い医師のもとを訪れる方がいいかもしれません。
CTやMRIなどの画像検査資料を集める
後遺障害等級の認定において、その症状を医学的に証明できるCTやMRIなどの画像検査資料が重要な位置を占めます。そのため、医師に依頼してこれらの検査資料を集めましょう。
※その他必要書類を用意する後遺障害等級認定の申請には、その他にも下記のような書類が必要です
必要書類・資料 | 書類の入手先 |
---|---|
自賠責保険支払請求書 | 自賠責保険会社など | 事故発生状況報告書 | 自賠責保険会社など |
交通事故証明書 | 自動車安全運転センター (保険会社からコピーをもらえる可能性もある) |
診療報酬明細書・診断書 | 病院(健康保険の場合は健保組合の場合も) ※整骨院の場合、「施術費明細書・施術証明書」 |
加害者側の自賠責保険会社に書類を提出する
必要書類をすべてそろえたら、それらの書類を加害者側の自賠責保険会社に提出します。後遺障害等級は自賠法により設定されているものであり、認定のための調査は損害保険料率算出機構と呼ばれる第三者機関が行います。
これらの手続きで後遺障害等級の認定を受けることができれば、その等級に応じた後遺障害慰謝料などの賠償が受けられるのです。
保険会社の症状固定に関する相談は受けてはいけない
交通事故における加害者側の任意保険会社が被害者に賠償額の交渉を持ちかける際、被害者に早期に症状固定とさせて、加害者側に有利な状態で示談に持ち込むといったケースがよく見られます。また任意保険会社は、症状固定以後は治療費などの賠償を行う必要がなくなるため、賠償期間を早く終了させようという意図もあるのです。しかし、症状固定の判断を下すのはあくまで医師であるため、任意保険会社の話は真に受けないことをおすすめします。
任意保険会社の言われるままにならないためにも賠償額の交渉には弁護士をつけることが得策と言えるでしょう。