交通事故被害を今すぐ解決したい方は当サイトの無料相談可の弁護士まで!土日祝24時間又は当日相談もOKなのでお気軽にお問い合わせください。

自動車同士の交通事故の過失割合その5

  • 2020/3/4
  • 2022/01/11


右(左)折車と後続の追い越し直進車との事故

万が一交通事故にあった場合、過失割合によって事故の補償などが変わってきます。しかし、過失割合は自動車の走行状況などによって細かく定められているため、詳細について理解できていない人もいるでしょう。そこで、ここでは右折や左折自動車とそれに後続する直進車との衝突事故の過失割合について説明していきます。

追い越し禁止の交差点での衝突

追い越し車線がなく、追い越しが禁止されている交差点で後続車Aが無謀な追い越しをかけて右折車Bと衝突したケースの過失割合はA90:B10が基本です。

このケースでは、そもそも追い越し禁止を無視した運転を行っている後続車Aに大きな責任がかかるのが特徴です。道路交通法30条3号によって、追い越しが禁止されている通常の交差点においては、右折車Bにある程度の過失があっても後続車Aの過失割合は大きくなります。

次のような事情がある場合、直進車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません。

・直進車Aに著しい速度違反があった場合、10%程度の加算
・直進車Aにその他の著しい過失があった場合、5%程度の加算
・直進車Aの重過失があった場合、10%程度の加算
・右折車Bがあらかじめ中央に寄らない右折をした場合、10~20%程度の減算
・右折車Bに、その他の著しい過失があった場合、10%程度の減算
・右折車Bに重過失があった場合、20%程度の減算

「A90:B10」という基本の過失相殺は、追い越しのために道路の中央を超えた後続車Aが適切な運転操作を行っていた右折車Bと衝突した事態を想定しています。なお、道路中央を超えていない状態での追い越しは、「1-3:右左折車が中央や左端側に寄るのに支障がない場合での衝突」「1-4:右左折車が中央や左端側に寄ることが不可である場合の衝突」を参考にしてください。

追い越し可能な交差点での衝突

追い越し車線があるなど、追い越しが禁止されていない交差点で後続の直進車A右折車Bに衝突した場合の過失割合はA50:B50です。

このケースでは追い越しが禁止されていないため、Bの過失相殺は追い越しが禁止されている場合と比べて軽くなります。また、道路交通法30条3号では、優先道路の場合には交差点内であっても追い越しが許されることになっているのがポイントです。そのため、基本の過失相殺は、後続の直進車Aと右折の合図をしているBが衝突した状況を想定しています。

次のような事情がある場合、直進車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません。

・直進車Aに著しい速度違反があった場合、10%程度の加算
・直進車Aにその他の著しい過失があった場合、10%程度の加算
・直進車Aの重過失があった場合、20%程度の加算
・右折車Bの合図なしの場合、10%程度の減算
・右折車Bにその他の著しい過失があった場合、10%程度の減算
・右折車Bに重過失があった場合、20%程度の減算

道路の中央または右端に寄って右折車Bが走行しているときは、「1-1:追い越し禁止の交差点での衝突」の事例が該当することがあります。なぜなら、右折車Bが道路の中央に寄っている事実に対して、それをさらに右側から追い越そうとした後続の直進車Aについては追い越し方法に関する法令違反が認められる可能性があるからです。

右左折車が中央や左端側に寄るのに支障がない場合での衝突

右折または左折をする自動車Bが中央や左端に寄れるにもかかわらず、そうした運転操作を行わずに後続の直進車Aと衝突した場合の過失割合はA20:B80です。

上記の基本の過失相殺は、直進車Aと右(左)折車Bが並んで走行できる幅員が十分にあった場合で、合図をした右(左)折車BとAが衝突した事態を想定しています。

次のような事情がある場合、直進車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません。

・直進車Aに15㎞以上の速度違反があった場合、10%程度の加算
・直進車Aに30㎞以上の速度違反があった場合、20%程度の加算
・直進車Aに著しい前方不注意やその他の著しい過失があった場合、10%程度の加算
・直進車Aにその他の重過失があった場合、20%程度の加算
・右(左)折車Bの徐行なしの場合、10%程度の減算
・右(左)折車Bの合図遅れの場合、5%程度の減算
・右(左)折車Bの合図なしの場合、15%程度の減算
・右(左)折車Bが直近の右左折をした場合、10%程度の減算
・右(左)折車Bにその他の著しい過失があった場合、10%程度の減算
・右(左)折車Bに重過失があった場合、20%程度の減算

仮に道路の幅員が複数の車両が並んで走行できないほど狭い場合には、本基準を適用せずに追突事故の基準を参考にするケースもあります。

右左折車が中央や左端側に寄ることが不可である場合の衝突

中央に寄れない右折車B(または左端に寄ることができない左折車B)後続の直進車Aと衝突したケースの過失割合はA40:B60です。

本基準は右(左)折車Bの車体が長いうえに、進入する先の道路幅が狭かったり、鋭角になっていたりするなどの理由で中央や左端に寄せきれない状況を想定しています。この場合、右(左)折車Bは、道路交通法70条の安全運転義務として右(左)後方の安全を確認する注意義務違反に違反をしていることを前提にしています。

次のような事情がある場合、直進車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません。

・直進車Aに15㎞以上の速度違反があった場合、10%程度の加算
・直進車Aに30㎞以上の速度違反があった場合、20%程度の加算
・直進車Aに著しい前方不注意やその他の著しい過失があった場合、10%程度の加算
・直進車Aにその他の重過失があった場合、20%程度の加算
・右折車Bの徐行なしの場合、10%程度の減算
・右折車Bの合図遅れの場合、10%程度の減算
・右折車Bの合図なしの場合、20%程度の減算
・右折車Bが直近の右左折をした場合、20%程度の減算
・右折車Bにその他の著しい過失があった場合、10%程度の減算
・右折車Bに重過失があった場合、20%程度の減算

道路交通法では右左折時には、「できるかぎり」道路の中央または左端に寄るように要求しているのが特徴です。そのため、「進入する先の道路幅が狭い」などのやむをえない理由がある場合には道路交通法34条の1項および2項の違反には該当しません。

T字路交差点における直進車とつきあたり路右左折車の衝突

T字路における直線路直進車と、突き当り路右左折車との事故もよく起こります。そこで、それらの事故における過失割合について道路の優先関係別に解説していきます。

【図139】同幅員における直進車と右左折車の衝突

T字路における直線路と突き当り路の双方が同幅員だった場合に直進車A右左折車Bが衝突したケースの過失割合はA30:B70が基本です。

なお、ここでいう同幅員の交差点とは、交差する道路の一方が明らかに広い道路以外の交差点を指します。

次のような事情がある場合、直進車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません

・Bの明らかな先入があった場合、10%程度の加算
・Aの著しい過失があった場合、10%程度の加算
・Aの重過失があった場合、20%程度の加算
・Bの著しい過失があった場合、10%程度の減算
・Bの重過失があった場合、20%程度の減算

同幅員ではありますが、基本的には右左折車であるBの過失が高くなります。ただし、Bが明らかに先入していたにもかかわらず、直進車Aが衝突してしまった場合にはAに10%程度の加算が発生します。また、交差する道路の一方に一時停止の規制があった場合には、「2-3:一時停止規制のある右左折車と規制なし直進車の衝突」が適用されるケースもあることは覚えておきましょう。

【図140】広路直進車と狭路右折車の衝突

一方が明らかに広い道路での直進をしている広路直進車Aと、狭路右左折車Bが衝突した場合の過失割合はA20:B80が基本です。

「2-1:同幅員における直進車と右左折車の衝突」のケースと比べても、優先道路である直進車Aの過失割合が低くなっていることが分かるでしょう。

次のような事情がある場合、直進車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません

・Bの明らかな先入があった場合、10%程度の加算
・Aの著しい過失があった場合、10%程度の加算
・Aの重過失があった場合、20%程度の加算
・Bの著しい過失があった場合、10%程度の減算
・Bの重過失があった場合、20%程度の減算

基本的にはBの過失のほうがかなり重いと判断されます。仮にBに重過失があった場合、広路直進車A0:狭路右左折車B100という過失割合になる可能性もあります。なお、重過失とは著しい過失よりも程度が重く、「故意と同一視できるほどの過失」です。具体的には「酒酔い運転」や「居眠り運転」などが該当します。

【図141】一時停止規制のある右左折車と規制なし直進車の衝突

T字路交差点において一時停止規制のある右左折車Bと、一時停止規制のない直進車Aにおける衝突事故が発生したときの過失割合はA15:B85が基本です。

そもそも直進車が優先であるうえに、一時停止規制のある右左折車は過失相殺において非常に不利になります。

次のような事情がある場合、直進車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません

・Bの一時停止後進入があった場合、15%程度の加算
・Aの著しい過失があった場合、10%程度の加算
・Aの重過失があった場合、20%程度の加算
・Bの著しい過失があった場合、10%程度の減算
・Bの重過失があった場合、20%程度の減算

本基準は、「同幅員の交差点での突き当り路に一時停止規制がある場合」「広路と狭路とが交わる交差点の突き当り路である狭路側に一時停止規制がある場合」に適用されます。つまり、本基準は「2-1:同幅員における直進車と右左折車の衝突」「2-2:広路直進車と狭路右折車の衝突」の特則という側面があります。

また、本基準は右左折車Bに一時停止義務があることを前提にしています。そのため、同車が一時停止したケースである「一時停止後進入」については、Aの過失割合の加算という修正要素にしています。

【図142】優先直進車と劣後右左折車の衝突

T字路交差点において、優先道路を走る直進車A優先道路ではない道路を走る右左折車Bが衝突した場合の過失割合はA10:B90が基本です。

本基準では、「2-2:広路直進車と狭路右折車の衝突」よりもAの過失割合が小さいのが特徴です。

このケースでは、次のような事情がある場合、直進車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません

・Bの明らかな先入があった場合、10%程度の加算
・Aの著しい過失があった場合、10%程度の加算
・Aの重過失があった場合、20%程度の加算
・Bの著しい過失があった場合、10%程度の減算
・Bの重過失があった場合、20%程度の減算

一方が明らかに広い道路だったり、優先道路だったりする場合のA、B相互の基本過失相殺割合を検討した結果、一時停止規制がないAの基本の過失相殺を15%と想定しています。

なお、優先道路とは、車両の通行を規制する道路標識などによって中央線または車両通行帯が設けられている道路のことを指します。

右折車同士の衝突

T字路における右折車同士の事故が起こった場合の過失割合はどうなるのでしょうか。ここでは、それらの事故を優先関係別に解説していきます。

【図143】同幅員における右折車同士の衝突

同幅員のT字路で直進路を走行していた右折車Aと、突き当り路を走行していた右折車Bが衝突した場合の過失割合はA40:B60が基本です。

直進路を走行していたAのほうが突き当り路から右折するBよりも過失割合が低くなるのが特徴だといえます。

次のような事情がある場合、右折車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません

・Bの明らかな先入があった場合、10%程度の加算
・Aの著しい過失があった場合、10%程度の加算
・Aの重過失があった場合、20%程度の加算
・Bの著しい過失があった場合、10%程度の減算
・Bの重過失があった場合、20%程度の減算

同幅員の交差点とは、交差する一方が「優先道路ではない」または「明らかに広くない」に該当する道路です。また、突き当り路に一時停止規制がある場合には、「3-3:一方に一時停止規制がある右折車同士の衝突」が該当するため、このケースも除きます。さらに、変形交差点のように、本基準がそのまま適用しにくい交差点も対象には含まれません。

【図144】広路と狭路を走行する右折車同士の衝突

一方が明らかに広い道路(直進路)を走行する右折車Aと、狭い道路(突き当り路)を走る右折車Bが衝突した場合の過失割合はA30:B70が基本です。

同幅員同士の交差点である場合に比べて、広路を走行しているAのほうが優先性は高いため、Aの過失割合は低くなります。

このケースでは、次のような事情がある場合、右折車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません

・Bの明らかな先入があった場合、10%程度の加算
・Aの著しい過失があった場合、10%程度の加算
・Aの重過失があった場合、20%程度の加算
・Bの著しい過失があった場合、10%程度の減算
・Bの重過失があった場合、20%程度の減算

一方が明らかに広い道路である場合、「一時停止規制のある道路」と「優先道路」では、相互の基本の過失相殺は異なります。
本基準では、一時停止規制がない場合の直線路右折車Aの基本の過失相殺率を25%としています。

【図145】一方に一時停止規制がある右折車同士の衝突

T字路の一方に一時停止規制がある右折車Bと、一時停止規制がない右折車Aが衝突した場合の過失割合はA25:B75が基本です。

本基準では、右折車Bが一時停止規制に違反したとみなされるため、Aの過失割合は低くなります。

次のような事情がある場合、右折車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません

・Bの一時停止後進入があった場合、15%程度の加算
・Aの著しい過失があった場合、10%程度の加算
・Aの重過失があった場合、20%程度の加算
・Bの著しい過失があった場合、10%程度の減算
・Bの重過失があった場合、20%程度の減算

本基準は、「同幅員の交差点で突き当り路に一時停止規制がある場合」と「広路と狭路が交わる交差点の突き当り路に一時停止規制がある場合」の双方で適用されます。つまり、本基準は「3-1:同幅員における右折車同士の衝突」および「3-2:広路と狭路を走行する右折車同士の衝突の特則という位置づけです。

また、本基準では「Bの明らかな先入」が修正項目にない点も特徴だといえます。本基準では、突き当り路から右折するBには、一時停止義務違反という重大な義務違反があるため、明らかな先入をあらためて修正要素として取り入れることは考慮していません。

【図146】一方が優先道路である右折車同士の衝突

T字路の優先道路を走行する右折車A優先道路ではない道路を走行する右折車Bが衝突したときの過失割合はA20:B80が基本です。

双方が右折車同士であるため、「2-4:優先直進車と劣後右左折車の衝突」に比べると、右折車Aの過失割合は高くなっています。

このケースでは、次のような事情がある場合、右折車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません

・Bの明らかな先入があった場合、10%程度の加算
・Aの著しい過失があった場合、10%程度の加算
・Aの重過失があった場合、20%程度の加算
・Bの著しい過失があった場合、10%程度の減算
・Bの重過失があった場合、20%程度の減算

本基準に限らず、T字路における事故の過失修正に該当する項目はそれほど多くありません。基本的には「明らかな先入があるかどうか」「著しい過失または重過失があるかどうか」だけです。

上記に加えて一方に一時停止の規制があった場合だけは、一時停止後進入の修正項目が加わります。