示談金額に納得できない!交通事故の裁判の進め方と損害賠償における4つの解決方法
- 2019/4/8
- 2019/05/31
交通事故に遭ったら、一般的には加害者本人や加害者の任意保険会社と「示談交渉」をして、慰謝料や治療費、休業損害などの支払いを請求します。被害者が自動車保険に入っていたら、被害者の保険会社が示談交渉を代行してくれるでしょう。
しかし、どうしても相手と意見が合わず、話し合いでは解決できない場合には、「裁判」が必要になってしまうケースもあります。裁判になったらどのように対応したらよいのでしょうか?
今回は、交通事故の「民事裁判」とはどのようなものか、また裁判になったときの適切な対処方法を解説していきます。
Contents
交通事故の加害者に発生する3つの責任
被害者が加害者に対して起こす裁判は「民事裁判」です。これは、交通事故加害者の「民事責任」を追及するためのものです。
- 「刑事責任」
- 「民事責任」
- 「行政上の責任」
交通事故の加害者には以下の3種類の責任が発生します。
以下でそれぞれの責任がどういったものか解説します。
刑事責任
刑事責任とは、違法行為(犯罪行為)を犯したときに刑事罰を与えられる責任です。
交通事故の中でも「人身事故」を起こして被害者を死傷させた場合、加害者には犯罪が成立します。
- 過失運転致死傷罪
- 通常程度の過失によって事故を発生させた場合に成立し、刑罰は「七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金」です。
- 危険運転致死傷罪
-
故意と同視できるほど重大で悪質な過失によって事故を発生させた場合に成立し、被害者が死亡すると1年以上の有期懲役刑、被害者が怪我をした場合には15年以下の懲役刑となります。
交通事故を起こした加害者は検察官によって起訴され、刑事裁判によって上記の範囲内で刑罰を与えられます。
民事責任
民事責任とは、加害者に成立する「不法行為責任」のことです。不注意(過失)によって交通事故を起こし、被害者を死傷させたことは「不法行為」に該当します。
そこで被害者は、不法行為にもとづく損害賠償請求として、加害者に対し治療費や慰謝料など各種の損害の支払いを求めることが可能です。
※損害賠償請求を行うとき、まずは示談交渉によって話し合いでの解決を目指しますが、加害者が支払いに応じない場合や、支払い額・支払い方法などについて合意できない場合には、裁判によって請求するしかなくなります。
行政上の責任
行政上の責任とは、公安委員会が発行している「運転免許」についての責任です。交通事故を起こしたり道路交通法に違反する行為をしたりすると、その人の運転免許の「点数」が加算されます。加算される点数は、違反内容や交通事故の程度によって異なり、重大な違反や事故ほど大きな点数が足される仕組みです。
今回取り上げる民事裁判は、前項の民事責任に関するものです。
損害賠償の解決方法が解決できる4つの方法
交通事故に遭うと、被害者には治療費や交通費、雑費や付添看護の費用、休業損害や慰謝料、逸失利益などいろいろな損害が発生します。
これらの損害を加害者に請求するには、以下のような方法があります。
示談(和解)
1つ目は話し合いによる「示談交渉」で、交通事故の損害賠償を解決する方法として、もっともメジャーで件数的にも多いものです。交通事故に遭うと、被害者や加害者の保険会社が話し合いを行いますが、それが示談交渉です。一般的には被害者と加害者の保険会社同士が話をしますが、相手に保険会社がついていなければ、被害者は加害者本人と示談交渉を行う必要があります。
話し合いによって損害賠償金額や支払い方法について合意ができたら、「合意書(示談書)」を作成して相手の保険会社から示談金を支払ってもらいます。この示談金が「損害賠償金」です。
※示談で賠償問題を解決できると、もっともスムーズにトラブルを終わらせることができます。
調停
調停は、簡易裁判所で調停委員を介して加害者と話し合う方法です。第三者が間に入るので、自分達の話し合いが決裂した場合でも、解決できる可能性が高くなります。
※強制力はないので、両者が納得できなければ調停は不成立になって終了します。
ADR
ADRとは、交通事故相談センターや日弁連交通事故相談センターなどの仲裁機関です。裁判所ではありませんが、交通事故トラブルの解決をサポートしてくれます。
ADRでも被害者と加害者の話し合いの仲介をしてもらえるほか、話し合いが決裂した場合には「審査」によってADRに解決方法を決めてもらえるケースもあります。
ただし被害者はADRの決定に従わなくてもよいので、納得できなければADRでは解決できません。
※相手が加害者本人のケースなどの場合、審査は利用できず解決が難しくなります。
裁判
裁判は裁判所に訴えを提起して、裁判官に損害賠償金の金額を決定してもらい、加害者への支払い命令を下してもらうための手続きです。示談や調停とは異なり強制力があるので、加害者や被害者が納得しなくても解決できます。
訴訟で認められるのは、法的に正しい主張と証拠によって証明された事実のみです。
そこで勝訴するためには適切に主張を行うとともに、主張内容を補強する証拠が必要となります。
示談や調停がスムーズに進まず決裂した場合の裁判の進め方
交通事故後、示談が不成立になった場合には、調停や裁判などの手続きを検討しなければなりません。弁護士に依頼せず、調停やADRを利用しても解決できなければ、最終的に裁判するしか解決方法がなくなります。
交通事故で裁判になった場合、どのようなことに注意が必要か説明します。
法的な主張を行う必要がある
裁判では、裁判官は法律に従って判断します。
※自分の主張を認めてほしければ、法的に正しい主張をしなければなりません。
「こんなに痛いのに」「加害者が嘘をついている」「加害者が悪い」などと言っても、法的な意味を持たない主張であればすべて排斥されます。裁判官は、同情では判決を書いてくれないのです。
※被害者側に有利な判決を得たければ、法律の考え方や基準を正しく理解した上で、それに従った対応が必要となります。
証拠が必要
裁判は「証拠主義」です。いくらそれらしき事実であっても、証拠によって立証されていなければ認められません。
※自分の主張を認めてほしければ、それを立証できるだけの十分な資料を集めてくる必要があります。「どのような証拠が必要かわからない」「どうやって集めたらよいかわからない」状態では、裁判に負けてしまいます。
負けると示談以上の不利益が及ぶ
示談を決裂させて裁判を起こす場合、被害者は「加害者側の提案は不当で、到底受け入れられない」と考えているものです。ただし裁判をしたからといって、必ずしも相手の提示条件よりよくなるとは限りません。裁判は、基本的に勝つか負けるかで、0か100しかありません。示談交渉では、通常相手は0ではなく一定の提案をしているはずなので、
裁判で負けると示談以下の条件となってしまう可能性があります。
これを「敗訴リスク」と言いますが、裁判を起こすときには必ず敗訴リスクを理解しておく必要があります。
弁護士に依頼することが必須
裁判には法的な主張や的確な立証が必要であり、専門的な対応をしなければなりません。よって素人の方が1人で臨むと、大きく不利になってしまいます。特に相手に弁護士がついているのにこちらについていない場合、圧倒的に不利です。
★相手が保険会社の場合、ほぼ確実に弁護士をつけてくるので、こちらも裁判を起こすのであれば、必ず弁護士に依頼しましょう。弁護士にもいろいろな取扱い分野があるので、できるだけ「交通事故が得意」な弁護士を探し、現状を相談して依頼するのがよいでしょう。