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交通事故における脊髄損傷と慰謝料請求額

  • 2019/4/19
  • 2019/09/26

交通事故の状況によっては、後遺障害を負ってしまうことも考えられます。脊髄損傷も、交通事故で起こり得る重症な症状のひとつです。脊髄は人間が体を動かす上で最も大切な神経のひとつで、一度損傷してしまうと再生することは非常に難しいと言われています。
そのような脊髄を損傷した場合、どのような症状が起きどの程度慰謝料額を獲得することが出来るのかを解説しています。慰謝料を請求する場合、示談交渉をした方がいいか迷う方もいるはずです。

そのため、ここでは脊髄損傷の症状から、慰謝料請求と示談まで解説しています。交通事故による脊髄損傷について知りたい方は、ぜひご一読ください。

脊髄損傷と後遺障害等級

脊髄とは背骨の脊柱管の内部を走る神経系です。成人の場合は、脳から第1、第2腰椎付近まで繋がっています。脳からの信号を伝える役割があり、体を動かす上で最も大切な機能のひとつです。

※現代医学では、中枢神経を再生することはできないと言われています。近年は話題になっているiPS細胞を使った研究が進んでいますが、治療法は確立していないのが現状です。脊髄損傷になった場合、現在の医学では完治できないため、生涯にわたって症状を抱えることになります。

脊髄損傷の種類は2つある

  • 完全損傷の状態
  • 脊髄を完全に損傷している状態で、中枢神経の伝達機能が患部で完璧に遮断されています。

  • 不完全損傷の状態
  • 中枢神経に損傷があるものの、伝達機能は完全には失われていません。

脊髄損傷の部位

脊髄損傷の症状は、損傷の部位が脳に近ければ近いほど深刻です。脳に近い部分が損傷すれば、その分信号を遮断するのも早くなり、麻痺の影響範囲も広くなります。

脊髄損傷は、損傷の部位ごとで呼び方が変わります。
●C(=Cervical:サービカル、頸部)
●T(=Thoracic:ソラシック、胸部)
●L(=Lumbar:ランバー、腰部)
●S(=Sacral:セイクラル、仙部・骨盤)

これらのアルファベットに、各部位の骨に上から順番に番号で振り分け、C2やT4と呼びます。部位ごとの症状を紹介すると、胸椎に該当するT2~T4の場合は、胴体や足の麻痺、そして感覚喪失が起こる可能性があるのです。頚椎にあたるC2~C5の場合では、脳にとても近いため、四肢や呼吸に使われる筋肉の麻痺が起きます。

脊髄損傷の部位

このように、脊髄損傷においてどの程度の後遺症が残るのか、どういった症状が出るのかは損傷された脊髄の部位によって異なります。交通事故によって、どの部位が損傷したかによって、麻痺等の症状が出る箇所が大きく違ってくるのです。
まずは、脊髄損傷の症状や治療費の目安について詳しく解説します。

脊髄損傷の主な症状

先ほども少し触れましたが、一般的には、首に近い位置を損傷するほど症状が重くなります。たとえば、首の位置の脊髄を損傷した場合は、首から下の感覚が麻痺したり、運動機能に障害がでたりといった広範囲における症状が起きる可能性が高いでしょう。

脊髄損傷の部位を表す際は、損傷を免れた脊髄のうち一番下の部位を使った「C4の脊髄損傷」というような表現が一般的です。ちなみに、「C4の脊髄損傷」というと、C4は無事でも、C5以下の脊髄が損傷し機能障害が生じている場合を指します。C4の脊髄損傷は非常に症状が重い場合が多く、全介助および電動車いすでの生活を余儀なくされてしまうケースもめずらしくありません。C5の脊髄損傷では、上腕二頭筋や三角筋、肩の関節などから上には機能障害が生じない場合が多いため、自力での食事などは可能でしょう。

しかし、介助が必要となるシーンは多く、移動は車いすで行う必要があります。C6の脊髄損傷では、胸から上の筋肉や関節は広範囲で無事であり、C5よりも自力で可能な行動の範囲も広がるでしょう。しかし、胸から下の筋肉や関節が障害されているため、車いすはどうしても必要です。このように、損傷部位が首から下に離れていくにつれ、後遺症として残る症状の範囲や重さはまったく異なってきます。

脊髄損傷の治療費目安

交通事故で脊髄損傷が疑われる場合は、整形外科にかかりましょう。整形外科ではMRIなどの診断方法によって損傷部位の特定等を行います。特定後、損傷部位の位置や症状の重さに応じて治療の方法や方向性を決定するのです。そのため、治療費がいくらかかるのかについては、まさにケースバイケースといえます。参考までに、脊髄損傷による完全麻痺の総入院期間と治療費の総額の目安をいうと、入院期間は約400日、治療費は約1100万円程度です。これが不完全麻痺になると、入院期間は約200日、治療費は約700万円程度とされています。あくまで一例ですが、脊髄損傷には、高額の治療費や入院期間が必要と見込まれます

脊髄損傷の疑いがある初期症状

脊髄損傷になった場合の代表的な症状は、しびれや麻痺です。症状が深刻な場合は、手足の感覚がなかったり、手足が動かなかったりすることも。脊髄損傷により循環障害が起きていれば、血液の低下をはじめ、心拍数の低下や除脈などの症状が見られます。呼吸障害があれば呼吸不全、膀胱直腸障害であれば失禁や排尿遅延など、脊髄損傷によって起こる症状はさまざまです。

※交通事故に遭い、その以降に体の異常を感じていれば、すぐに対処することが重要です。初期症状のタイミングで医師が脊髄損傷の状況を把握すれば、その後の対処や治療は大きく変わってきます。しびれや麻痺、手足の異変がある場合は、その旨をすぐに医師へ伝えましょう。

脊髄損傷の可能性があればすぐに検査を

手足に異常があれば、損傷を確認するために検査をします。検査方法として考えられるのは、レントゲンやCT、MRIです。これらの検査を実施することで、脊髄と脊椎の損傷具合を調べられます。検査をして損傷箇所が分かれば、治療に移ることになるでしょう。仮に損傷箇所が不明の場合、慰謝料請求でトラブルになる可能性があります。トラブルにならずに慰謝料を受け取るためにも、検査で損傷箇所を明確にすることはとても大切です。

脊髄損傷の後遺障害等級とは

脊髄損傷は、症状の状況により等級が規定されています。等級は下記の7つに分かれているので、自身の症状と照らし合わせてください。慰謝料請求は等級により金額が変わるため、しっかり確認することが大切です。
①自賠責基準
②裁判基準
③労働能力喪失率
(単位:万円)

等級 要件
第1級 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し
常に介護を要するもの
1600 2800 100%
第2級 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し
随時介護を要するもの
1163 2370 100%
第3級 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し
終身労務に服することができないもの
829 1990 100%
第5級 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し
特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
599 1440 79%
第7級 神経系統の機能又は精神に障害を残し
軽易な労務以外の労務に服することができないもの
409 1000 56%
第9級 神経系統の機能又は精神に障害を残し
服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
93 290 14%
第12級 局部に頑固な神経症状を残すもの 93 290 14%

脊髄損傷についての示談交渉

交通事故に遭い脊髄損傷を負った場合、慰謝料を請求するのではなく、示談交渉をするのも選択肢のひとつです。しかし、脊髄損傷の状況を後遺障害等級で示せれば、慰謝料を請求し十分払ってもらえる可能性があります。状況によっては、脊髄損傷ですので増額も望めるでしょう。

脊髄損傷は、介護が必要になることも珍しくありません。介護が必要な場合は、そのお金も用意する必要があります。
※一時的にではなく、生涯にわたって必要となるお金であるため、個人ではとても用意できません。だからこそ、慰謝料を請求し獲得する必要があるのです。

示談交渉では、このような多額のお金を支払ってもらうことは難しいでしょう。このように費用面だけを考えても、示談交渉はおすすめできません。

脊髄損傷の慰謝料に関する判例

大阪地方裁判所で平成26年3月26日に下された判決に、自賠責で併合6級の認定だったが、判決で併合2級が認められたというケースがあります。上述のとおり、脊髄損傷の症状が重く後遺症による損害等が大きいと認められる場合は、加害者からの賠償金が高額になる傾向があります。また、裁判で争われるときは、症状の重さなどに加えて、働く能力をどの程度損なったかなど、被害者や加害者をとりまくあらゆる事情が考慮されます。大阪地方裁判所で平成26年3月26日に下された判決は、裁判によって認定された後遺症の等級が、病院で診断された等級よりもはるかに重いものになった点でめずらしいものでした。

基本的には、病院で診断された症状の等級が慰謝料の額の多寡を大きく決定づけます。しかし、当該判決のように、病院で診断された等級に慰謝料額が基礎づけられないケースもあるのです。もちろん、すべての裁判で、病院で診断された等級よりも重い等級の症状だと判断されるわけではありません。慰謝料の判定に影響を与えうる事情は多岐にわたりますが、それを踏まえて効果的に主張するのは素人には難しいといえます。「何を主張し、どの部分を強調すべきか」の取捨選択を行うためには、知識だけではなく経験も必要です。やはり、交通事故による脊髄損傷の慰謝料については経験豊富な弁護士に相談することがベストでしょう。

脊髄損傷の慰謝料請求

脊髄損傷の慰謝料請求をする場合、まずは相場を知ることが大切です。一般的な後遺障害の慰謝料と比較すると、脊髄損傷は比較的高額なケースが多いといわれています。3,000万円程度の慰謝料が認められることも珍しくありません。

脊髄損傷の慰謝料請求をした場合、1,000万〜3,000万円程度まで高額な請求が認められています。脊髄損傷は、これからの生活に支障をきたすことが多いです。だからこそ、過去の判例のように、高額の慰謝料を認めてもらう必要があります。

しかし、慰謝料請求を自分たちだけで行うとしても、高額請求に繋がる可能性は低いでしょう。より高額の慰謝料を認めてもらうには、弁護士に依頼することが大切です。

脊髄損傷の判例に関して知見のある弁護士の基準で請求すれば、高額な慰謝料が受け取れる可能性が高まります。

※脊髄損傷になり、慰謝料請求のことで不安を抱えているなら、まずは弁護士に相談してみましょう。
これからの生活を少しでも楽にするために、高額な慰謝料請求を獲得する手助けをしてくれます。