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歩行者と自転車の事故の過失割合その1

  • 2020/3/4
  • 2021/07/21

自転車は、道路交通法上「車両」として扱われるため、過失割合において歩行者よりも不利に扱われることが通常です。しかし、場合によっては、歩行者の過失割合が大きくなるケースもあります。この記事では、歩行者と自転車の間の交通事故の過失割合についてわかりやすく解説します。

歩行者が横断中信号の切り替えがなかった場合

歩行者と自転車との間の交通事故はいろいろな場所で起こりますが、ここでは、歩行者が信号機のある道路を横断中に、直進してきた自転車と衝突したケースのうち、横断中に歩行者信号の切り替わりがなかった場合について解説します。

歩行者が青信号で横断・自転車が赤信号で進入

青信号で歩行者が道路を横断中に、赤信号で自転車が進入したケースでは、基本的に100%自転車の過失になります。

道路交通法では、自転車は、自動車と同じ「車両」として扱われます。(法2条8号、同11号)そして、車両は赤信号の場合には所定の停止位置を越えて進行してはいけません(令2条1項)この義務に違反した自転車との関係では、青信号で道路を横断している歩行者は絶対的に保護されるべきと考えられています。

そのため、もし青信号で道路を横断している歩行者に、左右の安全の確認不足や、直前直後横断、佇立(理由なく道路で立ち止まること)や後退などがあったとしても、過失相殺をするべきはないとされています。

横断中に歩行者側の信号が青色から黄色に変わっていた場合(事故発生時に自転車側が赤信号の場合)でも、同じ結論になります。この場合、歩行者には、速やかにではあるものの、道路の横断を続ける自由が保障されているからです(令2条1項)しかし、黄信号の間に歩行者の横断が終わらず、赤信号になってからも横断を続けていた場合には、歩行者にも過失が認められます。

歩行者が黄信号で横断・自転車が赤信号で進入

黄信号で歩行者が道路を横断中に、赤信号で自転車が進入したケースでは、基本的に歩行者の過失割合は15%になります。
黄信号の場合、歩行者は道路の横断を始めてはいけません(令2条1項)。さらに、この場合には歩行者に左右の安全確認義務があります。そのため、歩行者にも過失が認められます。

しかし、赤信号に違反して道路に進行した自転車の過失は、歩行者に比べてはるかに大きいために、原則15%以上の過失相殺は行わないとされています。

次のような事情がある場合、歩行者の過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるというわけではありません。

  • 歩行者が、集団横断をしている場合、5%程度の減算
  • 歩行者が、児童が高齢者の場合、5%程度の減算
  • 歩行者が、幼児や身体障害者の場合、5%程度の減算
  • 自転車に著しい過失があった場合、5%程度の減算
  • 自転車に重過失があった場合、10%程度の減算

高齢者など速く歩くことができない歩行者の過失割合は低くなり、危険な運転をしていた自転車の過失割合は高くなります。(その分、歩行者の過失割合は低くなる)また、歩行者が集団で横断している場合には、自転車からも見えやすくなるので、自転車の過失割合が高くなります。このような過失割合の修正がなされるのは、そもそも過失相殺は公平な結論を導くためのものだからです。

横断中に歩行者側の信号が黄色から赤色に変わっていた場合(事故発生時に自転車側が赤信号の場合)でも、経験上よくあることなので、同じ結論になります。なお、青信号が点滅しているときは黄信号として扱います(令2条1項、4項)。また、自転車の対面信号が左右折の青矢印信号の場合は、直進車にとっては赤信号として扱われます。

歩行者が赤信号で横断・自転車が赤信号で進入

赤信号で歩行者が横断中に、赤信号で自転車が進入したケースでは、基本的に歩行者の過失割合は25%となります。 赤信号では、歩行者は道路を横断してはならず、自転車を含む車両は所定の停止位置を越えて進行してはいけません。しかし、自転車の過失の方が大きいため、基本的に歩行者の過失割合は25%です。

次のような事情がある場合、歩行者の過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるというわけではありません。

  • 幹線道路での事故の場合、5%程度の加算
  • 歩行者が、直前直後横断や佇立、後退をした場合、5%程度の加算
  • 住宅街、商店街での事故の場合、5%程度の減算
  • 歩行者が、集団横断をしていた場合、5%程度の減算
  • 歩行者が、児童や高齢者の場合、5%程度の減算
  • 歩行者が、幼児や身体障害者の場合、10%程度の減算
  • 自転車に著しい過失があった場合、10%程度の減算
  • 自転車に重過失があった場合、20%程度の減算
  • 歩車道の区別がない道路での事故の場合、5%程度の減算

幹線道路では交通量が多いので、歩行者にも注意が求められます。逆に、住宅街や商店街では人が多いので自転車の運転にはより注意することが必要です。歩車道の区別がないような狭い道路でも、自転車にはより注意することが必要です。そのため、公平な結論になるように、このような修正がなされます。

歩行者が赤信号で横断・自転車が黄信号で進入

赤信号で歩行者が横断中、黄色信号で自転車が進入したケースでは、基本的に歩行者の過失割合は60%となります。
歩行者が、歩行者側の信号がまだ赤であるのに、自転車側の信号が黄色に変わったことを見て、交差点に侵入してくる車両(自転車を含む)はいないと軽信して、見込み横断をした場合にこのケースになります。

このケースでは、自転車には、黃信号の場合には所定の停止位置を越えての進行は禁止されているので、これに違反した過失があります。一方で、歩行者は、赤信号に違反していますし、黄信号でも進入してくる自転車がいることを予測する必要がありました。そこで、歩行者の60%の過失となります。

次のような事情がある場合、歩行者の過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません

  • 幹線道路である場合、5%程度の加算
  • 歩行者が、直前直後横断や佇立、後退をしていた場合、5%程度の加算
  • 住宅街や商店街などの場合、10%程度の減算
  • 歩行者が、集団横断をしていた場合、10%程度の減算
  • 歩行者が、児童、高齢者の場合、10%程度の減算
  • 歩行者が、幼児や身体障害者の場合、20%程度の減算
  • 自転車に著しい過失があった場合、10%程度の減算
  • 自転車に重過失があった場合、20%程度の減算
  • 歩車道の区別がない道路の場合、10%程度の減算

これらの修正も、公平な結論を導くためのものです。

歩行者が赤信号で横断・自転車が青信号で進入

赤信号で歩行者が横断中、青信号で自転車が進入したケースでは、基本的に歩行者の過失割合は80%です。
歩行者は、赤信号で道路を横断してはならないので、このケースで想定される事故の態様は、赤信号に違反した歩行者の過失によるものと考えられます。そのため、基本の過失相殺率は80%と高い数字になっています。

次のような事情がある場合、歩行者の過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません

  • 住宅街や商店街での事故場合、10%程度の減算
  • 歩行者が、集団横断をした場合、10%程度の減算
  • 歩行者が、児童、高齢者の場合、10%程度の減算
  • 歩行者が、幼児や身体障害者の場合、20%程度の減算
  • 自転車に著しい過失があった場合、10%程度の減算
  • 自転車に重過失があった場合、20%程度の減算
  • 歩車道の区別がない道路の場合、10%程度の減算

これらの修正も、公平な結論を導くためのものです。しかし、基本の過失相殺率が高いため、原則として加算修正は行わず、幹線道路で事故が起こった場合でも歩行者の過失割合は加算されません。もっとも、歩行者が自転車の直前に飛び出してきたという場合には、自転車が免責される(歩行者の過失割合が100%になる)ことも考えられます。

 

歩行者が横断中に信号が途中で切り替わった場合の過失割合

続いて、歩行者が信号機のある道路を横断中に直進してきた自転車と衝突したケースのうち、歩行者の信号の色が横断途中で切り替わった場合の歩行者対自転車の交通事故の過失割合について解説します。

歩行者が横断中に青から赤へ切り替わり・自転車が赤で進入

青信号で歩行者が横断を始めたが、横断中に赤信号へ切り替わり赤信号で自転車が進入したケースでは、基本的に100%自転車の過失になります。

道路を横断している歩行者は、信号が黄色に変わった時点で、速やかに歩行を終えるか、横断をやめて引き返すことが必要です。そのため、このケースでは歩行者にも過失があると言えます。しかし、自転車は、赤信号の場合、所定の位置を超えて進行してはいけません。

それに加えて、横断歩道により進路の前方を横断または横断しようとしている歩行者がいる場合には、横断歩道の直前で一時停止をする必要があります(法38条1項)。これらに違反して赤信号で進行した自転車の過失の割合が非常に大きいため、歩行者保護の見地から原則として過失相殺は行いません。

ただし、次のような事情がある場合、歩行者の過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません

  • 幹線道路での事故の場合、5%程度の加算
  • 歩行者が、直前直後横断や佇立、後退をした場合、5%程度の加算
  • 歩行者が、集団横断をした場合、5%程度の減算
  • 歩行者が、児童や高齢者の場合、5%程度の減算
  • 歩行者が、幼児、身体障害者の場合、5%程度の減算
  • 自転車に著しい過失があった場合、5%程度の減算
  • 自転車に重過失があった場合、10%程度の減算

原則として過失相殺は行わないのですが、例えば交通量が多く歩行者にも注意が求められる幹線道路での事故であれば、歩行者にも5%の過失割合が認められることになります。

しかし、幹線道路での事故であっても、歩行者が児童である場合や自転車に著しい過失がある場合には、100%自転車の過失(過失相殺は行わない)ということになります。

歩行者が横断中に赤から青へ切り替わり・自転車が赤で進入

赤信号で歩行者が横断を始めたものの横断中に青信号へ切り替わり、赤信号で自転車が進入したケースでは、基本的に歩行者の過失割合は15%になります。
このケースでは、歩行者が、対面信号が赤なのに、交差点道路の信号が赤信号に変わったことから、進行してくる車両(自転車を含む)はないと軽信して見込み横断を開始し、横断中に青に変わった際に、赤信号で進行してきた自転車に衝突された場合を想定しています。

歩行者は、赤信号の場合には道路を横断してはいけません。しかし、衝突時には青信号に変わっていて、横断が禁止される状況ではなくなっていました。そこで、歩行者が赤信号で横断・自転車が赤信号で進入のケースよりも過失相殺率は10%程度減算されています。

次のような事情がある場合、歩行者の過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません

  • 幹線道路での事故の場合、5%程度の加算
  • 歩行者が直前直後横断や佇立、後退をしていた場合、5%程度の加算
  • 住宅街や商店街などの場合、5%程度の減算
  • 歩行者が、集団横断をしていた場合、5%程度の減算
  • 歩行者が、児童、高齢者の場合、5%程度の減算
  • 歩行者が、幼児や身体障害者であった場合、10%程度の減算
  • 自転車に著しい過失があった場合、10%程度の減算
  • 自転車に重過失があった場合、20%程度の減算
  • 歩車道の区別がない道路の場合、5%程度の減算

歩行者が横断中に青から赤へ切り替わり・自転車が青で進入

青信号で歩行者が横断を始めたものの横断中に赤信号へ切り替わり、青信号で自転車が進入したケースでは、基本的に歩行者の過失割合は20%になります。

このケースは、歩行者が、歩行者側の青信号で横断を開始したものの、途中で黄信号になり、更に赤信号に変わった時点で、自転車側の青信号で進行してきた自転車に衝突された場合を想定しています。

歩行者は、黄信号に変わった時点で速やかに横断を終えるか、横断を止めて引き返さないといけません。しかし、歩行者の過失は大きいとは言えないので、基本的な過失割合は20%とされました。

次のような事情がある場合、歩行者の過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません

  • 幹線道路での事故の場合、5%程度の加算
  • 歩行者が直前直後横断や佇立、後退をした場合、5%程度の加算
  • 住宅街、商店街での場合、5%程度の減算、
  • 歩行者が、児童や高齢者であった場合、5%程度の減算
  • 歩行者が、幼児や身体障碍者であった場合、10%程度の減算
  • 歩行者が、集団横断をしていた場合、10%程度の減算
  • 自転車に著しい過失があった場合、10%程度の減算
  • 自転車に重過失があった場合、20%程度の減算
  • 歩車道の区別がない道路の場合、5%程度の減算

歩行者が横断中に黄から赤へ切り替わり・自転車が青で進入

黃信号で歩行者が横断を始めたものの横断中に赤信号へ切り替わり、青信号で自転車が進入したケースでは、基本的に歩行者の過失割合は35%になります。

歩行者は、黄信号の場合には横断を始めてはいけません。そのため、歩行者が青信号で横断を始めて赤信号で衝突したケースと比較すると、このケースの歩行者には、横断を始めた時点で違反があるというより大きな過失が認められます。そのため、基本の過失相殺率は、歩行者信号が青から赤へ切り替わり・自転車が青で進入したケースに15%程度加算されて35%となります。

次のような事情がある場合、歩行者の過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません

  • 幹線道路の事故の場合、5%程度の加算、
  • 歩行者が直前直後横断佇立や後退をした場合、5%程度の加算
  • 住宅街、商店街の場合は、5%程度の減算
  • 歩行者が集団横断をしていた場合、10%程度の減算
  • 歩行者が児童や高齢者の場合、10%程度の減算
  • 歩行者が幼児や身体障害者の場合、20%程度の減算
  • 自転車に著しい過失があった場合、10%程度の減算
  • 自転車に重過失があった場合は20%程度の減算
  • 歩車道の区別がない道路の場合、5%程度の減算