自動車同士の交通事故の過失割合その4
- 2020/3/4
- 2022/01/11
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左折車と直進車の事故の過失割合のケース
【図126】同幅員で左折する左方車と直進する右方車の衝突
同幅員の交差点上で左折する左方車Aと直進する右方車Bが衝突した場合の過失割合については、以下の過失割合が基本となります。
【基本】A50:B50
次のような事情がある場合、左折車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません。
・Aが徐行をしなかった場合、10%程度の加算
・Aにその他の著しい過失があった場合、10%程度の加算
・Aに重過失があった場合、20%程度の加算
・Aが大型車の場合、5%程度の加算
・見通しがきく交差点の場合、10%程度の減算
・Bが減速をしなかった場合、10%程度の減算
・Bにその他の著しい過失があった場合、10%程度の減算
・Bに重過失があった場合、20%程度の減算
ここでいう同幅員の交差点とは、交差する道路の一方が優先道路や明らかに広い道路ではない場合の交差点のことです。交差する2本の道路に通行の優先などが認められないケースになります。
【図127】狭路の左折車と広路の直進車の衝突
狭路を進行している左折車Aと、広路を進行している直進車Bの過失割合についてです。基本的な過失割合は以下のようになります。
【基本】A70:B30
次のような事情がある場合、左折車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません。
・Aが徐行をしなかった場合、10%程度の加算
・Aにその他の著しい過失があった場合、10%程度の加算
・Aに重過失があった場合、20%程度の加算
・Aが大型車の場合、5%程度の加算
・Bが減速をしなかった場合、10%程度の減算
・Bにその他の著しい過失があった場合、10%程度の減算
・Bに重過失があった場合、20%程度の減算
左方からの左折した場合、他の車両の進路を妨害する可能性が高いです。左折を終えて加速をしたとしても、直進車Bとは速度の差が生じることが予測されます。したがって、直進車がある場合、左折車は直進車に道を譲るべき、ということです。こうした評価を元に、ベースとなる過失割合は左折車の方が大きく設定されています。
【図128】一時停止規制ありの左折車が規制なしの直進車と衝突
一時停止規制のある左折車Aと、一時停止規制のない直進車Bが衝突した場合です。基本となる過失割合は以下のようになります。
【基本】A80:B20
次のような事情がある場合、左折車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません。
・Aが徐行をしなかった場合、10%程度の加算
・Aにその他の著しい過失があった場合、10%程度の加算
・Aに重過失があった場合、20%程度の加算
・Aが大型車の場合、5%程度の加算
・Aが一時停止後に進入をした場合、15%程度の減算
・Bが減速をしなかった場合、10%程度の減算
・Bにその他の著しい過失があった場合、10%程度の減算
・Bに重過失があった場合、20%程度の減算
ここでは、直進車Bが優先道路通行である場合のみを基準としています。よって、優先道路通行者が左折する場合には、事情に応じて過失相殺率を判断することになります。
【図129】優先道路の直進車と優先道路ではない左折車の衝突
優先道路を進行している直進車Bと優先道路ではない左折車Aが衝突した場合の過失割合は、以下の通りです。
【基本】A90:B10
次のような事情がある場合、左折車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません。
・Aが徐行をしなかった場合、10%程度の加算
・Aにその他の著しい過失があった場合、10%程度の加算
・Aに重過失があった場合、20%程度の加算
・Aが大型車の場合、5%程度の加算
・Bにその他の著しい過失があった場合、10%程度の減算
・Bに重過失があった場合、20%程度の減算
優先道路とは、交差点内に中央線や車両通行帯が設けられている道路のことで、優先道路を示す道路標識が設置されていることでも判別可能です。合流ポイントなどでは一時停止標識がない道路なども優先道路に当てはまります。今回のケースは直進車が優先道路である場合のみを基準としての過失割合を算出してあります。
右折する車同士の事故のケース
【図130】同幅員の左方車と右方車の右折同士の衝突
同幅員で右折する左方車Aと、右折する右方車Bが衝突したケースです。基本となる過失割合は以下のようになります。
【基本】A(左方車)40:B(右方車)60
次のような事情がある場合、左折車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません。
・Aが右折方法違反をした場合、10%程度の加算
・Aが右折禁止違反をした場合、10%程度の加算
・Aにその他の著しい過失があった場合、10%程度の加算
・Aに重過失があった場合、20%程度の加算
・Bに右折方法違反があった場合、10%程度の減算
・Bに右折禁止違反があった場合、10%程度の減算
・Bにその他の著しい過失があった場合、10%程度の減算
・Bに重過失があった場合、20%程度の減算
同幅員の交差点とは、交差する道路の一方が優先道路や明らかに広い道路以外の交差点のことです。このケースの事故は見通しのきかない交差点で起こることが多いです。そのため、見通しのきく交差点だった場合は、それぞれの過失の重さの程度を吟味したうえで、過失割合が決まっていきます。
【図131】狭路車と広路車の右折同士の衝突
狭路車Aと広路車Bが右折同士で衝突としたケースでの過失割合は、以下の通りです。
【基本】A(狭路車)70:B(広路車)30
次のような事情がある場合、左折車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません。
・Aが右折方法違反をした場合、10%程度の加算
・Aが右折禁止違反をした場合、10%程度の加算
・Aにその他の著しい過失があった場合、10%程度の加算
・Aに重過失があった場合、20%程度の加算
・Bに右折方法違反があった場合、10%程度の減算
・Bに右折禁止違反があった場合、10%程度の減算
・Bにその他の著しい過失があった場合、10%程度の減算
・Bに重過失があった場合、20%程度の減算
広路とは、自動車の運転手が交差点の入り口において、道路の幅員よりも、一見してかなり広いと客観的に見分けられる程度のものをいいます。
【図132】一時停止規制ありと一時停止規制なし右折車同士の衝突
一時停止規制のある右折車Aと一時停止規制がない右折車Bの過失割合については以下の通りです。
【基本】A(規制あり)75:B(規制なし)25
次のような事情がある場合、左折車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません。
・Aが右折方法違反をした場合、10%程度の加算
・Aが右折禁止違反をした場合、10%程度の加算
・Aにその他の著しい過失があった場合、10%程度の加算
・Aに重過失があった場合、20%程度の加算
・Aが一時停止後に進入をした場合、15%程度の減算
・Bに右折方法違反があった場合、10%程度の減算
・Bに右折禁止違反があった場合、10%程度の減算
・Bにその他の著しい過失があった場合、10%程度の減算
・Bに重過失があった場合、20%程度の減算
一時停止規制のあるAが一時停止をした場合には、修正要素が適用されます。一時停止規制のAが一時停止して、Bが速度や距離を誤って交差点に進入をした場合には、15%減算の修正値とする、ということになっています。
優先道路の優先車と非優先道路の劣後車の衝突
優先道路を進行している優先車Bと、非優先道路を進行している劣後車Aの右折同士の衝突での過失割合については以下の通りです。
【基本】A(劣後車)80:B(優先車)20
次のような事情がある場合、劣後車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません。
・Aが右折方法違反をした場合、10%程度の加算
・Aが右折禁止違反をした場合、10%程度の加算
・Aにその他の著しい過失があった場合、10%程度の加算
・Aに重過失があった場合、20%程度の加算
・Bに右折方法違反があった場合、10%程度の減算
・Bに右折禁止違反があった場合、10%程度の減算
・Bにその他の著しい過失があった場合、10%程度の減算
・Bに重過失があった場合、20%程度の減算
優先道路とは、交差点内に中央線や車両通行帯が設けられている道路のことです。優先道路の道路標識が設置されている道路だけでなく、交差点や合流ポイントなどでは一時停止標識など道路も優先道路に当てはまります。今回のケースでは、優先道路を走行する車両が右折をする際には徐行をしているという事情もあり、Bを10%不利に方向に修正してあります。
左折車と対向する右折車が衝突したケース
左折車Aと、対向する右折車Bとの間で衝突が起こった事故のケースです。基本となる過失割合は以下のようになります。
【基本】A(左折車)30:B(右折車)70
次のような事情がある場合、左折車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません。
・Aが徐行をしなかった場合、10%程度の加算
・Aに左折方法違反があった場合、10~20%程度の加算
・Aに既右折があった場合、10%程度の加算
・Aにその他の著しい過失があった場合、10%程度の加算
・Aに重過失があった場合、20%程度の加算
・Bが大型車の場合、5%程度の減算
・Bが徐行をしなかった場合、10%程度の減算
・Bが大回り右折をした場合、10%程度の減算
・Bが第1車線に進入した場合、10%程度の減算
・Bの合図なしの場合、10%程度の減算
・Bにその他の著しい過失があった場合、10%程度の減算
・Bに重過失があった場合、20%程度の減算
車両同士の事故が交差点内で起こった場合には、基本的に直進、左折、右折の順に優先度が高いと考えます。したがって、このケースでは右折車は左折車の進路を妨害してはならない、ということを考慮されます。
しかし、左折車の方も左折の前に一時停止をしていた場合、対向車の動きを察知することは可能であると考えられます。こういった事情を考慮して、右折車に対しても一定の過失割合が認められます。