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自動車同士の交通事故の過失割合その3

  • 2019/12/18
  • 2022/01/11

信号機のない交差点で左右から進入してきた自動車と直進車の事故

信号機のない交差点は事故が起こるリスクもそれなりに高くなります。ここでは信号機のない交差点で左右どちらかから右折してきた自動車と、直進車の衝突事故の過失割合について詳しく解説していきます。なお、直進車をA、右折車をBとして解説している点には注意してください。


右折する自動車(左方車)が直進車と衝突

右折する自動車(左方車)Bが直進車Aと衝突した場合、A40:B60という過失割合が基本です。

道路交通法では信号機がなく、道路幅も同等のような交差点へ同時に侵入した場合、左側にいる車両が優先になる左方優先の原則が適用されます。しかし、本基準では、直進を左方優先よりも重視しているのが特徴です。

次のような事情がある場合、直進車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません。

・Aが減速をしなかった場合、10%程度の加算
・Aに15㎞以上の速度違反があった場合、10%程度の加算
・Aに30㎞以上の速度違反があった場合、20%程度の加算
・Aにその他の著しい過失があった場合、10%程度の加算
・Aにその他の重過失があった場合、20%程度の加算
・Aが大型車の場合、5%程度の加算
・Bが徐行をしなかった場合、10%程度の減算
・Bが右折禁止違反をした場合、10%程度の減算
・Bが早回り右折をした場合、10%程度の減算
・Bにその他の著しい過失があった場合、10%程度の減算
・Bに重過失があった場合、20%程度の減算
・Bが大型車の場合、5%程度の減算
 
なお、基本となる過失相殺は、あくまでもAがそれなりに減速していることを前提にしています。減速していない場合には、Aに10%程度の加算が加えられます。

また、早回り右折については通常の右折よりもハンドルを早く切り始めてしまうため、直進車の通行を妨げる時間が長くなることから危険性が増大する運転操作です。そのため、Aに10%程度の減算修正が行われます。

右折する自動車(右方車)が直進車と衝突

右折する自動車(右方車)Bが直進車Aと衝突した場合、A30:B70という過失割合が基本です。

このケースでは直進車Aが左方車になります。そのため、左方優先の原則によって、Aの過失割合が少なくなっているのが特徴です。

次のような事情がある場合、直進車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません。

・Aが減速をしなかった場合、10%程度の加算
・Bが既右折の場合、15%程度の加算
・Aに15㎞以上の速度違反があった場合、10%程度の加算
・Aに30㎞以上の速度違反があった場合、20%程度の加算
・Aにその他の著しい過失があった場合、10%程度の加算
・Aにその他の重過失があった場合、20%程度の加算
・Aが大型車の場合、5%程度の加算
・Bが徐行をしなかった場合、10%程度の減算
・Bが右折禁止違反をした場合、10%程度の減算
・Bにその他の著しい過失があった場合、10%程度の減算
・Bに重過失があった場合、20%程度の減算
・Bが大型車の場合、5%程度の減算

Bが既右折していた場合で、右折開始時点が早ければ早いほど、Aの事故回避措置をとる余地は大きくなるため、15%程度の加算の対象となります。また、徐行の定義については、基本的に直ちに停車できる程度の速度での走行です。時速で表す場合には一般的に10キロ以下であるかどうかが重要になります。

狭路から広路へ出た右折車と直進車が衝突

狭路から広路へ出た右折車Bが直進車Aと衝突した場合、A20:B80という過失割合が基本です。広路とは、交差する道路の一方の幅員が客観的に見てかなり広いということが、一見して分かるものを指します。

それに対して、狭路とは交差する道路の一方の幅員が客観的に見てかなり狭いことが、一見して分かる道路です。広路のほうが優先になりますので、Aの過失割合は低くなるケースが多いです。

次のような事情がある場合、直進車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません。

・Aが減速をしなかった場合、10%程度の加算
・Aが右方車の場合、Bの明らかな先入があった場合、10%程度の加算
・Bが既右折の場合、15%程度の加算
・Aに15㎞以上の速度違反があった場合、10%程度の加算
・Aに30㎞以上の速度違反があった場合、20%程度の加算
・Aにその他の著しい過失があった場合、10%程度の加算
・Aにその他の重過失があった場合、20%程度の加算
・Bが徐行をしなかった場合、10%程度の減算
・Bが右折禁止違反をした場合、10%程度の減算
・Bが早回り右折をした場合、10%程度の減算
・Bにその他の著しい過失があった場合、5%程度の減算
・Bに重過失があった場合、10%程度の減算

なお、狭路側に一時停止の表示がある場合には、さらにAの過失割合は少なくなります。詳しくは、「1-6:右折車が一旦停止義務に違反し直進車と衝突」で説明します。

広路から狭路へ出た右折車と直進車が衝突

広路から狭路へ出た右折車Bが直進車Aと衝突した場合、A60:B40という過失割合が基本です。

この場合は広路のほうが優先ではあるため、Aの過失割合のほうが高くなっている点が特徴だといえます。なお、狭路側の直進車Aに一時停止の規制がある場合には、さらに過失割合が悪化し、A70:B30となります。

次のような事情がある場合、直進車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません。

・Aが減速をしなかった場合、10%程度の加算
・Aに15㎞以上の速度違反があった場合、10%程度の加算
・Aに30㎞以上の速度違反があった場合、20%程度の加算
・Aにその他の著しい過失があった場合、10%程度の加算
・Aにその他の重過失があった場合、20%程度の加算
・Bが徐行をしなかった場合、10%程度の減算
・Bが右折禁止違反をした場合、20%程度の減算
・Bが早回り右折をした場合、10%程度の減算
・Bにその他の著しい過失があった場合、10%程度の減算
・Bに重過失があった場合、20%程度の減算

減速や徐行、早回り右折などは、これまでに紹介したものと同じポイントが重視されます。過失割合の加減算についても同様です。

広路から出た右折車と狭路に向かう直進車の衝突(同方向に進行)

広路から出た右折車Bが狭路へ向かう直進車Aと同方向に進行して衝突した場合、A50:B50という過失割合が基本です。

ただし、狭路側に向かう直進車Aの前に一時停止の表示がある場合には、「A60:B40」になります。また、AとBが同時に交差点中心に着き、一旦停止または徐行で突き合せた後、更に交差点中心を越えて進行しようと衝突した場合、Aの過失は50%です。このケースでは双方が一旦停止または徐行を行っており、どちらにも注意義務が同程度あるとみなされるからです。

次のような事情がある場合、直進車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません。

・Aが減速をしなかった場合、10%程度の加算
・Bに既右折があった場合、15%程度の加算
・Aに15㎞以上の速度違反があった場合、10%程度の加算
・Aに30㎞以上の速度違反があった場合、20%程度の加算
・Aにその他の著しい過失があった場合、10%程度の加算
・Aにその他の重過失があった場合、20%程度の加算
・Bが徐行をしなかった場合、10%程度の減算
・Bが右折禁止違反をした場合、10%程度の減算
・Bにその他の著しい過失があった場合、10%程度の減算
・Bに重過失があった場合、20%程度の減算

著しい過失とは、一般的に通常の運転では想定できないような過失を指します。たとえば、携帯電話の操作をしながらの運転やわき見運転などです。このケースでは、右折車Bが障害物のないことを確認して右折したにもかかわらず、後から猛スピードで来た直進車Aに追突されるケースが想定されます。

右折車が一旦停止義務に違反し直進車と衝突

右折車B側に一旦停止の標識があるにもかかわらず、違反して直進車Aと衝突した場合A15:B85という過失割合が基本です。

このケースでは、狭路と広路が交わる交差点の狭路側(右折車B)に一旦停止の規制があるため、道路交通法36条、37条、43条が関係し、Bの過失割合は大きくなります。

次のような事情がある場合、直進車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません。

・Aが減速をしなかった場合、10%程度の加算
・Bに既右折があった場合、15%程度の加算
・Bが一時停止後に進入をした場合、15%程度の加算
・Aに15㎞以上の速度違反があった場合、10%程度の加算
・Aに30㎞以上の速度違反があった場合、20%程度の加算
・Aにその他の著しい過失があった場合、10%程度の加算
・Aにその他の重過失があった場合、20%程度の加算
・Bが徐行をしなかった場合、10%程度の減算
・Bが右折禁止違反をした場合、10%程度の減算
・Bに早回り右折があった場合、10%程度の減算
・Bにその他の著しい過失があった場合、10%程度の減算
・Bに重過失があった場合、15%程度の減算

右折車Bが交差点に進入する前にしっかり一時停止したものの、直進車Aが向かってくる距離や速度の判断を誤り衝突したケースでは、右折車Bの修正値は15%になります。

直進車が一旦停止義務に違反し右折車(左方車)と衝突

直進車Aのほうに一旦停止の標識があるにもかかわらず、違反して右折車B(左方車)と衝突した場合、A70:B30という過失割合が基本です。

狭路と広路が交わる交差点の狭路側(右折車B)に一旦停止の規制があると、道路交通法36条、37条、43条の相互関係で狭路の一時停止規制違反の過失は大きいといえます。また、直進車Aが一時停止をしないで交差点に進入したことが前提です。

次のような事情がある場合、直進車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません。

・Aが減速をしなかった場合、10%程度の加算
・Aに15㎞以上の速度違反があった場合、10%程度の加算
・Aに30㎞以上の速度違反があった場合、20%程度の加算
・Aにその他の著しい過失があった場合、10%程度の加算
・Aにその他の重過失があった場合、20%程度の加算
・Bが徐行をしなかった場合、10%程度の減算
・Bが右折禁止違反をした場合、10%程度の減算
・Bに早回り右折があった場合、15%程度の減算
・Bにその他の著しい過失があった場合、10%程度の減算
・Bに重過失があった場合、15%程度の減算

直進車Aが交差点の手前でしっかりと一時停止を守り、右折車Bが徐行しながら交差点の中心方向へ進行して衝突してしまうケースでは、直進車Aが減算修正の対象になります。

直進車が一旦停止義務に違反し右折車(右方車)と衝突

直進車Aのほうに一旦停止の標識があるにもかかわらず、違反して右折車B(右方車)と衝突した場合、A60:B40という過失割合が基本です。

この場合も、道路交通法36条、37条、43条の相互関係によって、一時停止違反の過失割合は大きくなります。なお、直進車Aが一時停止しない場合を基準としています。

次のような事情がある場合、直進車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません。

・Aが減速をしなかった場合、10%程度の加算
・Bが既右折の場合、15%程度の加算
・Aに15㎞以上の速度違反があった場合、10%程度の加算
・Aに30㎞以上の速度違反があった場合、20%程度の加算
・Aにその他の著しい過失があった場合、10%程度の加算
・Aにその他の重過失があった場合、20%程度の加算
・Bが徐行をしなかった場合、10%程度の減算
・Bが右折禁止違反をした場合、10%程度の減算
・Aが一時停止後に進入した場合、15%程度の減算
・Bにその他の著しい過失があった場合、10%程度の減算
・Bに重過失があった場合、20%程度の減算

「広路から出た右折車と狭路に向かう直進車の衝突(同方向に進行)」の場合は、A50:B50でした。あくまでも、直進車Aの前に一時停止の表示があって、それを守らない場合に「A60:B40」になります。

非優先道路から優先道路へ進行する右折車と直進車の衝突(直進車が優先)

非優先道路から優先道路へ進行する右折車Bと優先道路を進行している直進車Aが衝突した場合、A10:B90という過失割合が基本です。

この場合の特徴は、直進車Aが優先道路を通行している場合、修正要素として加えない点だといえます。優先道路であり、右折車側に責任があるため過失割合は右折車Bにかなり大きくなります。

次のような事情がある場合、直進車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません。

・Aが右方車の場合や、Bの明らかな先入があった場合、10%程度の加算
・Bが既右折の場合、15%程度の加算
・Aに15㎞以上の速度違反があった場合、10%程度の加算
・Aに30㎞以上の速度違反があった場合、20%程度の加算
・Aにその他の著しい過失があった場合、10%程度の加算
・Aにその他の重過失があった場合、20%程度の加算
・Bが徐行をしなかった場合、10%程度の減算
・Bが右折禁止違反をした場合、10%程度の減算
・Bが早回り右折をした場合、10%程度の減算
・Bにその他の著しい過失があった場合、5%程度の減算
・Bに重過失があった場合、10%程度の減算

Aが右方者の場合、右折するBと出合い頭の事故になるケースが多いため、Aに10%程度の加算が加わります。一方、Aが左方車の場合には、Bが既右折であるとみなされてAに15%程度加算されるケースがあります。

優先道路から右折してきた自動車と直進車が衝突(右折車が優先)

優先道路から右折してきた自動車Bと、非優先道路を進行していた直進車Aが衝突した場合、A80:B20という過失割合が基本です。

右折車であるBが優先道路から非優先道路に進入した際の事故を想定したケースで、直進車であるAの優先性が低い点が考慮されています。

次のような事情がある場合、直進車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません。

・Aが減速をしていなかった場合、10%程度の加算
・Aに15㎞以上の速度違反があった場合、10%程度の加算
・Aに30㎞以上の速度違反があった場合、20%程度の加算
・Aにその他の著しい過失があった場合、5%程度の加算
・Aにその他の重過失があった場合、10%程度の加算
・Bが徐行をしなかった場合、10%程度の減算
・Bが右折禁止違反をした場合、10%程度の減算
・Bが早回り右折をした場合、10%程度の減算
・Bにその他の著しい過失があった場合、10%程度の減算
・Bに重過失があった場合、20%程度の減算

右折車Bは優先道路を通行しているものの、右折するときには徐行義務があります。ただし、法律上要求される速度の徐行ではないため、徐行しなかった場合には10%程度の減算となります。

優先道路から非優先道路へ進行する右折車と直進車が衝突(右折車が直進車と同方向へ向かう)

優先道路から右折してきた自動車Bと、非優先道路を進行していた直進車Aが同じ方向へと向かうときに衝突した場合、A70:B30という過失割合が基本です。

優先道路と非優先道路が交わる交差点で、直進車Aが非優先道路を進んでいるケースです。一時停止規制と優先道路規制では、直進車Aの一時停止規制のほうが過失割合は大きくなるため、Aの過失は70%となっています。

次のような事情がある場合、直進車Aの過失割合に修正が加えられます。
※すべてのケースにあてはまるわけではありません。

・Aが減速をしていなかった場合、10%程度の加算
・Aの既右折があった場合、15%程度の加算
・Aに15㎞以上の速度違反があった場合、10%程度の加算
・Aに30㎞以上の速度違反があった場合、20%程度の加算
・Aにその他の著しい過失があった場合、10%程度の加算
・Aにその他の重過失があった場合、20%程度の加算
・Bが徐行をしなかった場合、10%程度の減算
・Bが右折禁止違反をした場合、10%程度の減算
・Bが早回り右折をした場合、10%程度の減算
・Bにその他の著しい過失があった場合、10%程度の減算
・Bに重過失があった場合、20%程度の減算

減速や早回り右折、既右折、徐行なしについては上述のとおりです。それぞれ10%の加減算の対象となります。